女優をしていて今、私はすごく楽しくて

――早苗という役を通して、あらためて考えたことはありますか?

美山 早苗みたいに自分の人生を変えたいと思う瞬間って、あるよなぁって(笑)。演じていて、早苗を応援したくなる気持ちと、ちょっと心が痛くなる気持ちがすごくあって。私は仕事面で自分の変化をいろいろと感じながらきたんですけど、早苗は恋愛を通して成長していく子なので、演じながら青春をひとつ過ごせたような、そんな気持ちになりましたね。

――仕事面で感じた自分の変化とは?

美山 去年、デビューして20周年を迎えて。子役からずっとお芝居を、女優さんをやってきたんですけど、いろいろと環境の変化が今回のドラマのように年齢とともにあって。女優として自分はどうしていきたいんだろう、どうなりたいんだろう、自分はどうしたら変われるんだろうって、いろいろ考えて考えて。でも、わからなかったんですよね。それが19歳のときに、声優業を始めるというすごく大きな出来事が環境の変化の1つとしてあって。新しい世界を知れたというか、もっと自由にやっていいんだって思えるようになったんです。

――声優業を始める前、なぜ変化を求めていたのでしょうか?

美山 私はドラマ中心で過ごしてきたので、そこでのやり方しか知らなかったから、自分の世界がまだまだ狭いっていうことも、早苗と同じで気づいていなかったんです。やっぱり別の世界を知らないと、それって気づけないことで。どうして私が自分の世界が狭いのかもしれないって気づいたのかというと、15歳ぐらいのときに『太陽に灼かれて』という舞台に出演させていただいたからなんです。主演が鹿賀丈史さん、演出が栗山民也さんで、子どもにはかなり難しい、なかなか渋いお話で、ある意味、挑戦ではあったんです。

私、デビューは舞台だったんですけど、5歳ぐらいではっきりと覚えていなくて。ほとんど初舞台みたいな気持ちでその舞台に出演して、(舞台で映える芝居ではなく)ドラマの芝居しかできなくて、自分的には何もできなかったって感じたんです。でもそのときに、まだまだ芝居で学ばなきゃいけないことがいっぱいある、今の自分を変えればもっと楽しい世界があるのかもしれないなって思うことができました。

 

――今26歳の美山さんも、ドラマの登場人物たちと同様に“アラクオ”だからこそ思い悩むことはありますか?

美山 どうなんですかねぇ……。女優をしていて今、私はすごく楽しくて。前はそれこそ子役から女優に変わっていく途中の年齢ということで(そのイメージが先行して)、できない役がすごくいっぱいあったように感じていたのですが、今は前ほどそういうこともなく、できる役がすごく増えたので、とても楽しくて。だから今は、思い悩むようなことはないですね! もちろん、これできなかったとか、もっとこうしたいとか、そういうことは日々ありますけど、大きいことは、うん、ないです!

――「これできなかったとか、もっとこうしたいとか」というのは例えば?

美山 人見知りが直らない!

――芸歴20年なのに?

美山 はい(笑)。特に同世代の人たちがいると。(子役として)大人に囲まれていた歴が長いからか、同世代の人と一緒にお仕事をすることに、ちょっとまだ慣れてない部分があって(苦笑)。なので、『アラクオ』の現場も最初はめちゃくちゃ人見知りをしてしまったので、そこは直したいですね。30歳になってもまだ人見知り……というのは避けたいですね(笑)。

――ちなみに、現場で人見知りしているとき、どんな感じになるんですか?

美山 台本を一人でずっと読んでいます(笑)。

――『アラクオ』の現場もそんな感じだったんですか?

美山 最初は(苦笑)。初めて(キャストの)皆さんにお会いしたときは、バタバタしていて時間もなく、「よろしくお願いします」と言って終わっちゃったんですけど、次に会ったのがもう撮影現場で、いきなり(メインキャストの)5人が集まったんです。ちょっと空いた時間があったりしても自分から話しかけられず、「あー、今日も話しかけられなかった……」って最初の頃はなっていましたね。でも、そういうときに佐藤さんがすごくコミュニケーションを取ってくれて、本当に救われました。

――早苗と美山さん自身の恋愛観にはどういう違いがありますか?

美山 早苗は彼氏に対して、言いたいことがあっても我慢していて、いつの間にかすれ違ってしまい、別れることになりましたけど、私も我慢しちゃう性格というか。早苗もそうなんですが、それを我慢と思ってない。言いたいことはあっても、言わないほうがうまくいくと思って言わないんですよね。そういうことを器用にやってしまうのが逆に不器用というか。恋人との時間を一緒に楽しく過ごそうっていう思いからなんですけど、それがちょっと空回りしていたりするんですよね(笑)。そういうところが似ているかなと思います。

――そういう部分は直していきたい?

美山 うーん、これからに期待って感じですかね(笑)。まぁでも、そんなに無理に直そうとは思わないです。それこそ早苗みたいに、何かを経験して、ちょっとずつ人って変わっていくんだなって今回のドラマを通しても思ったので、そういう生き方もそれはそれでいいんじゃないかな、楽しいんじゃないかなと思っています。

 

プロフィール
美山加恋(みやま・かれん)
1996年12月12日生まれ。東京都出身。2002年に舞台『てるてる坊主の照子さん』で子役としてデビュー。2004年にドラマ『僕と彼女と彼女の生きる道』で草彅剛の娘役・凜を好演し、一躍脚光を浴びた。以降、数々のドラマ、映画、舞台に出演。2016年にはアニメ『エンドライド』で声優に初挑戦し、2017年にはアニメ『キラキラ☆プリキュアアラモード』で宇佐美いちか/キュアホイップ役でアニメ初主演を果たしたほか、『アイカツ!』シリーズの蝶乃舞花役など声優としても活躍している。現在、舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』にデルフィー役で出演中。Twitter:@karen_miyama Instagram:@miyamakaren