「板尾係長」は現場でネタを考えていた
たか 板尾さんはネタ作りとかはどうされてるんですか?
板尾 ごっつのコントとかで言うと、僕の場合はキャラ的に1人でやるコントがよくあったんで。例えば、長いコントがあったあとの箸休め的な、短いコント。構成上、そういうコントをやる係みたいな。
たか 「板尾係長」とかですよね。
板尾 そうそう。あれも、みんなで打ち合わせをしてる流れで「じゃあ板尾に1人でなんかやらせてみよう」みたいな始まりやったと思うんですよね。なんとなく、水の中から出てきて一言、みたいな。そこで自分が「係長」ってつけて。そこで言うことは……当日決めてましたね。
たか そうだったんですね!
板尾 収録も予定通りにはいかんから、スタジオの隅で「何を言おうかな」とか考えて。始まったら水の中から出て、何か言って沈むだけ。特にキッカケがあるようなコントでもないから、そこまでリハもないし、なにより正解があるわけじゃない(笑)。
たか じゃあ、普段からメモを取ったりとかはされないですか?
板尾 あんまりしないですね、面白いことって覚えてませんか?
たか たしかに、はい。
板尾 それに「今日はこれやろう」って予定しても、お笑いって環境に左右されがちなものだから、流れとか無視して、用意したものをやってもうまくいかない。やっぱり、そのときで対処していくのものだなって。板尾係長に関しては、本番の何分前、へたしたらパッと出たものでやってましたね。
――たかさんの漫画の作り方は?
たか そうですね。週刊連載だったんで、本当に時間がなかったです。僕の場合、事前に渡すプロットとか企画書からも全然変わってた気がします。
板尾 よくありますよね。
たか 本当に時間がなくて、始めたての頃はアシスタントをつけずに自分で全部やっていて。アシスタントの探し方もわからないし、今は手伝っていただいている方がいるんですけど、1人でやってるときはツラすぎて、涙を流しながら描いてました。
板尾 大変やと思いますよ。
板尾が書いた幻の小説が読みたい!
たか 板尾さんにお聞きしたかったことがあるんです。
板尾 なんですか?
たか 友達が、板尾創路が昔に書いた小説がめちゃくちゃおもしろかったって。なんか橋田壽賀子が商店街をただ歩くだけ、みたいなストーリーらしいと言ってて。
板尾 それなんやったかな? ブログじゃないな、なんか雑誌に載せた気がするんやけど、どこに書いたかは覚えてないけど、なんとなく内容は覚えてます。
たか それが読みたくてネットで調べたりしてるんですけど、全然情報がなくて……本当の話なのかな?って。本当でよかった(笑)。
板尾 なんかね、何本か書いた気がするんですよね、下北沢のコインランドリーの話とか。でも、それ書いて感想をもらったこともなかったし、世間のリアクションも知らなかったです。どこにも残ってないんじゃないですかね。
――板尾さんの実家の話も聞きたいんですよね?
たか そうです! たしかケーキ屋さんでしたよね。
板尾 そうですね。でも、子どもの頃は違ったんですよ、なんかのフランチャイズのお店を手伝って、そのうち親父がやるようになったんちゃうかったかな、今はもう閉めてますけどね。
――たしか川柳もやられていたんですよね。板尾さんの芸風とかは、お父さまの影響を受けているんじゃないかと思いました。
板尾 やってましたね。けっこう有名な川柳作家やったんですよ、親父もいい年なので、もうほぼ引退してますけど。小さい頃から、川柳の会みたいな場所に連れてかれてたんですけど、お題に対して制限された言葉の中で、面白いものから真面目なものまで表現する。言葉遊びっていうのかな? そういうのは、確実に影響を受けていると思います。
たか 僕が実家の話を聞きたいのは、みんな自分の家のことだから普通に話すけど、聞いているほうにとっては当たり前じゃない、そういうのが面白いなって。
板尾 わかります。たかさんのご両親はどんな感じでしたか?
たか 父親と母親は『住みにごり』に近い感じ。父は酒を飲んで、独り言を言いながら暴れる、みたいな。その場で飛び上がって怒るみたいなのは、実際に父がやっていたことです。
板尾 あ、あれって本当のことだったんですか、あれおもろいですね。
たか ありがとうございます(笑)。本当にイヤでした、自分の部屋が隣だったんで。
板尾 ご自身が漫画家になったことは伝えたんですか?
たか いえ、伝えてはないです。母親は漫画家としてデビューしたあとに亡くなってしまって、単行本を出棺のときにそっとしのばせて。そしたら、係の人に「これじゃ燃えないです」って、みんなの前でページを輪っかにして折り曲げだして……「なんだこれ?」ってザワザワしたんで、バレちゃったかもしれないんですけど。