X(旧Twitter)を中心としたSNSに、文字制限である140字以内で完結する超短編小説を投稿し、20万以上もの「いいね!」を続々と叩き出す話題のアカウントの生みの親、作家・方丈海氏。

140字という制限があるなかで、恐怖・笑い・感動・涙、そしてドンデン返しありの“意外な展開&オチ”が最大の魅力! 大人も子どももハマること間違いなしの新しい“ショートショート”をご堪能ください。

※本記事は、方丈海:著『#140字小説2 「1話30秒」の意味が分かるとゾクッとする話』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

両手いっぱいに10円玉を持った男の子

「かーねーしょんください!」

男の子はヒマワリみたいな笑顔で俺にそう言った。

両手の上にはたくさんの10円玉がある。

しかし、それでは1輪しか買えない。

だが、金額なんて些末なことだ。

伝わるべきことがしっかりと伝われば、世の中はそれでいいのだ。

だから俺はこう伝えた。

「坊主。ウチは八百屋なんだ」

▲「花屋はもう少し先」 イメージ:Hakase / PIXTA

そろそろ免許返納するかな

「俺も、もう歳だ。そろそろ免許返納するかな」

「あなた…」

「その前に…最後のドライブに行かないか?」

「プロポーズも、車の中でしてくれたわね」

「覚えてたのか」

「当然よ」

ドライブを終え、家に戻ると、夫はしばらく運転席を離れなかった。

そして「楽しかったなぁ…」と呟き、車を降りた。

▲「終点」 イメージ:naka / PIXTA

家に帰ってからやってくれ

レジでバイトしてると、お手本のような恋人つなぎをしてるカップルが来た。

会計のときですら、二人は手を放さない。

彼氏が財布を取り出し、彼女が紙幣を抜き取ってあげる共同作業。

ここはホームセンターだが、そういうのはホームに帰ってからやれ。

イラつきながら商品を確認すると、接着剤を剥がす液だった。

▲「DIY失敗」  イメージ:kaka / PIXTA

寝不足でウトウトしていると…

恐ろしい体験をした。

日頃の寝不足もあり、ウトウトしていると、氷のように冷たい手に足首を掴まれたんだ。

「うおっ!?」

びっくりして起きたが、当然、誰もいない。

気味が悪いんで俺は急いで風呂場を出て毛布にくるまった。

後で思ったんだが、湯舟で寝る俺を、奴は助けてくれたのかもしれない。

▲「お節介焼き」 イメージ :tymaman / PIXTA

手を握っていた二人の女の子

ゴーストタウンを探索していると道端に2体の古いご遺体があった。

服装からして二人とも女の子か。二人は手を固く握り合っていた。

おそらく目の前のビルから飛び降りての心中だろう。

こんな世の中だ、珍しくもない。よく見ると二人は手をつないでいなかった。

片方が片方の手首を、固く固く握っていた。

▲「無理心中」 イメージ:Shie0924 / PIXTA