通りかかった人に「?」と思わせる空間

――シンプルなフォントに、子どもが描いたようなぐるぐるマーク。区営の施設としてはかなり攻めたデザインですね。

小宮:普通の人が描いたような親しみやすいデザインを狙っています。若い世代の方々から既存の公共施設は利用しにくい、利用したくないといった声がありましたので、そこを改善したい思いがありました。前を通った人に「ここは本屋なのか、カフェなのか?」と興味を持ってもらえるよう、ちょっとした不可解さというか、もやもや感をあえて持たせています。

――大々的なPRではなく、待ちの戦略に徹すると。

小宮:私たち行政が発信するよりも、実際に利用された方からの発信の方が、多くの方に届くし、響くと思うんです。もちろん、区や施設からの発信もしますが、口コミを大切にしていきたいです。

――オープンして実際の反響はいかがでしょうか?

小宮:こちらの予想よりも大きく、オープンから4ヶ月経ちましたが、すでに100件を超える相談をいただいています。すでに実行した企画も20件ほどあります。相談者も20代~60代という幅広いです。多いのは30代~40代の女性ですね。本当に「待ってました!」と言わんばかりの反響です。しばらくは関係性構築期として、地域の人たちとの関係性をつくるタームと考えており、一気にブレイクさせることは狙っていません。

イベントを実施するparkには30名ほどが収容可能で、ガード下なので大きな音出しも可能です。使用料は足立区民であれば、スペース全体貸しで1時間2,600円で、マイクやスピーカーなどの設備も一通りそろっています。ぜひ、もちろん区民でなくても利用していただけるので、この記事を読んで興味を持った方がいればご一報ください。

▲ぐるぐる内のbase

子どもたちの生きる力を育む試み

――昨年から同じ綾瀬地区で始まった「アヤセ未来会議」についても教えてください。

小宮:我々の事業は大きく分けて「場づくり」と「人づくり」にあると考えています。あやセンターぐるぐるが前者とするなら、アヤセ未来会議は後者です。明確なテーマは決めず、「綾瀬をもっと愛される地域に」をコンセプトに皆でアイデアを自由に出し合う場です。当初はテーマを決めないで参加者が集まるか不安でしたが、これまで10代~80代まで幅広い世代の方にご参加いただき、多世代交流の場としても機能しています。

伊東:地域活動への参加経験のある子どものほうが、そうでない子どもに比べてレジリエンス(自己肯定感・自己制御能力)が高いというデータがあります。私たちは直接的に貧困の子どもを助けるアプローチは取っていませんが、地域活動に参加する大人が増えれば、それだけ子どもたちの生き抜く力を高めることができます。大人たちが活躍できる場を生み出すことは、将来の子どもの活躍につながると考えています。

――地域活動への参加が子どものレジリエンスを高めるとは、意外な関連性があるんですね。

小宮:まずはアヤセ未来会議で地域活動に積極的な面白い人たちを見つけ、あやセンターぐるぐるで活動の場を提供する。子どもたちのロールモデルとなる大人をどんどん増やせば、子どもたちも未来に希望が持てるようになります。

「こんな生き方もあるんだ」という気づきを与え、その子どもたちにも、あやセンターを活用してもらう。道のりはスゴく遠いですが、そういったぐるぐるの循環を通して、子どもたちに逆境を乗り越える力を身につけてもらいたいんです。

伊東:学校にはできない、私たちならではの施策で面白い大人を増やすことを目的に活動しています。

――では、お二人の考える綾瀬地区の未来像を教えてください。

小宮:ここに来ればやりたいことにチャレンジできる、面白い大人たちに出会える街になってほしいですね。あえて綿密な計画は立てず、私たちは常に走りながらブラッシュアップを重ねていくスタンスです。これからも綾瀬地区の波瀾万丈を楽しんでいきたいですね。

伊東:派手さはありませんが、綾瀬は人の入れ替わりがある街なので、常に若さにあふれた面白い街になってほしいと考えています。これだけ住民が変わっているので、行政も変革の必要性を感じています。お役所的な硬さも多少は必要ですが、ほどよいユルさも必要ですし、小宮のような異端児も必要です(笑)。我々の活動が、その風穴をあけるきっかけになればいいですね。

(取材:松山 タカシ)