フジテレビの情報番組『ノンストップ!』1月26日放送に教育学者の齋藤孝氏がスタジオに生出演し、身につけておきたい大人の言葉選びについて、MCやゲスト陣とともに議論した。
「役不足」と「力不足」は反対の意味
明治大学文学部の教授である齋藤孝氏が、これまで出版した著書の累計発行部数は1000万を超える。直近では、若者をはじめとする全世代に向けて、コミュニケーションの仕方をイラストでわかりやすく学べる『二度と忘れない! イラストで覚える大人の教養ことば』(小社刊)を発表している。
気になる話題を徹底討論するサミットのコーナーに出演した齋藤氏。MCのバナナマン・設楽統をはじめ、ゲストのカンニング・竹山、たんぽぽ・川村、千秋、『婦人公論』元編集長・三木哲男氏と“大人の言葉選び”について話を展開した。
コーナーの冒頭で街の方々にインタビューをしたVTRが流れると「年賀状を書いた経験もあまりないので、文章の決まり文句が全然わからない」などの若者の声が。なかなか正しい文章を学ぶ機会がないことがうかがえるが、言葉の意味を正しく理解してコミュニケーションをとらないと、職場でトラブルになったり、ママ友に常識がないと思われてしまったりすることもあると警鐘を鳴らす。
スタジオでは、間違えて使う人が多い言葉をいくつか見ていく展開に。最初の誤った使い方の例として「新人の私にはまだまだ役不足ですが、頑張りたいと思います。」という文が提示された。間違っていないのでは? と思う人も多そうだが、本来は「役不足」ではなく「力不足」と表現すべきだと齋藤氏が説明。
カンニング竹山は「(役不足が間違いだと)聞いたことはあります。何度も聞いているのに、そのたびに忘れてしまう」と反応。さらに「こういう言葉っていくつかあるけど、みんなで共有していないと自分だけが変なふうに使っていると思われてしまうから、みんなと同じように使っている」と続けた。千秋は「これ、ダメですって言われなかったらわからなかった」と驚きを見せた。
「役不足」は「力不足」とは反対の言葉となる。その人の力量に比べ、与えられた役目が軽いという意味で使われる。このように、使い方を間違えて真逆の意味になってしまっていることがあると齋藤氏は話す。
マネージャーの言葉遣いに違和感があった竹山
その後、会議などの場面で間違いやすい日本語の事例として「意見の収拾がつかず議論が煮詰まったので、今日のところは結論が出ないだろう」の文章、メールのやりとりで使われる「了解しました」「承知いたしました・かしこまりました・拝承いたしました」の使い方について解説。
カンニング竹山は「うちのマネージャーも『承知いたしました』を使うんだけど、なんか俺がパワハラしているみたいな気持ちになる」と経験を交えての思いを吐露。かしこまる必要のない場面、フレンドリーな感じを出したいときなどであれば「了解です」などでもよいのではないか、と齋藤氏は応えた。
続いては、“これは大人だな”と周りの人に感じてもらうための言葉選びについて。齋藤氏によると、常にポジティブを意識することが大事だという。大人になると場を盛り上げていく場面が増えるもの。そんなときに否定的なことばっかり言っていると、周りは暗くなってしまう。では、どうすればポジティブを意識できるのか…?
ポジティブを意識する具体的な方法として、齋藤氏は「でも・いや・しかし・とはいえ」などの言葉を使わないことを挙げる。部下から出た意見と自分の意見が違うときに「いや、それ違うんじゃないの?」と言うよりも、「なるほど。それで思いついたんだけど、これはどうかな?」と、まずは相手を受けて、それから寄り添いつつズラしていくのがよいと具体例を提示。「でも」という言葉は使わなくても、案外生きていけるのかもしれないと続けた。
さらに、ポジティブを意識するという話では、相手を褒めたり感想を伝えたりする場面では「細部拡大方式」が使えるようだ。全体を見るとそうでもないことでも、細部だけを見ると良いことがあるので、一部を拡大してみると褒めやすくなるのだと言う。ただ「よかったです」と褒めるよりも、細部を拡大して褒めた方が相手にも伝わりやすい。
齋藤氏は「竹山さんが汗を流しながら叫んだところがよかった」「ぶちぎれて大声を出したところがよかった」など、某番組での竹山を例に挙げて具体例を出し、笑いを誘った。
その後、自分の意見や気持ちを相手に伝えるときに心がけたいポイントとして「5秒で伝える意識をもつ」ことをあげた齋藤氏。これを練習すると「えっと〜」「あの〜」などのつなぎの言葉が減るのだという。三木氏も「聞く人がちゃんとポイントを押さえて聞けるようになるし、話す人が本当に伝えなきゃいけないことを考えるようになるのでとても良いと思います」と賛同していた。