仕事などで使うことが多いメールやSNSで、上手にコミュニケーションをとることは、社会のなかで生きていく人間関係を築くうえでも大事なことです。社会人になりたての20代から、重責を担う50代まで。これからの時代を生きるすべての大人が心に留めたい大切なことを、教育学を専門とし、ベストセラー作家でもある齋藤孝氏が、お礼メールでのポイントを教えてくれました。

※本記事は、齋藤孝:著『大人だからこそ忘れないでほしい45のこと』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

シンプルな内容の連絡でも早ければ好印象となる

他人との良好な関係性を保つためには、適度な“定期連絡”が大切です。とはいえ、ある時期は親しくしていても、ある時期はめっきり会わない、という友人もいますね。そういう場合には、まるでその時期の到来を知らせるかのごとく、決まった時期に年賀状や季節の連絡をする習慣を持つのも、一つの手でしょう。

実際、ずいぶん前に卒業した学生であるにもかかわらず、「お元気でいらっしゃいますか? 先だって、先生の新刊を読みました」というような内容で、年に1~2回ハガキを下さる方がいます。このようなつながりがありますと、最後に会ってから、いくら時間が経っても、なんとなく“つながっている”感覚が持てるものです。

ただし、昨今での“返事”といえば、もっぱらSNSでの返事を想起する人が多いかもしれません。もし、SNSでのやり取りであれば、“こちらが返事をした状態で終わっている”ことが望ましいでしょう。

しかし、「ありがとうございました!」「こちらこそ、ありがとうございました」など、どこまで返事をし続ければよいか、判断に迷う場面もあるかと思います。そういった場合は、年齢の若い人の返事で終わるようにすると安心かもしれません。

つまり、「自分が最後に返事をしたのだから、礼儀は欠いていない」という状態です。ちょっとしたことではありますが、頭に入れておくとよいでしょう。

▲シンプルな内容の連絡でも早ければ好印象となる イメージ:buritora / PIXTA

また、頼みごとや頼まれごとの場面においては、“変化があったら報告をする”ことが不可欠です。たとえば、試験の前にはいろいろとアドバイスを求めたにもかかわらず、いざ合格した途端に連絡を怠ってしまうようであれば、それは明らかな“不義理”といえるでしょう。

しかし、どんなに律儀な人でも、ついつい、連絡や報告を怠ってしまうことがありますね。ただし、礼儀を欠いては印象が悪い。このようなことを防ぐためには“素早く簡単な対応で対処する”ことをおすすめします。

たとえば、皆さんが思いがけずお菓子や本をいただいたとしましょう。「食べてから、味の報告をしよう」「本を読んでから感想を言わなくては」となれば、ちょっと返事が億劫になるような気がしませんか? そういう場合にこそ、素早い対応をしましょう。

つまり、菓子折りを前に簡単な電話を一本入れて、「これからゆっくり頂戴するところです、ありがとうございました」と言う。あるいは、頂戴した本を前に「冒頭だけ拝読しましたが、面白そうですね! これからじっくり読ませていただきます」と、簡単なメールを送る。これらは、対応が早いからこそ許される、簡単な対応です。

時間が経ってしまうと、まずは遅れたお詫びから入らなければなりません。また、きちんとしたお礼状を望まれる人もいるかもしれませんし、それだけ本の詳細な内容に触れてほしいと、先方は思うかもしれません。時間が経てば、内容が求められる、ということです。

したがって、スピード感のある返事をすることで、簡単な内容でも礼儀を尽くすことができます。まさに、今の時代にフィットした御礼のかたちかもしれません。

また、返信のペースを自分自身で工夫してみましょう。仲がよくて毎日やり取りをしているのは微笑ましいことですが、そのうち、どちらかが疲れてしまうかもしれませんね。そういう場合は、こちらが返信を少しずつ遅らせることによって、1日に3回だった連絡を1日に1回に、そして3日に1回と、ズラしていくことができます。

つまり、こちらが返信をコントロールすることによって、やり取りの頻度を望ましいものに変化させることができる、というわけです。

語彙力を集めて返信のストレスを軽減させる

あるいは、語彙力もポイントの一つかもしれません。気軽な友人であれば問題ありませんが、先輩などの目上の人、あるいは仕事相手などを相手にしたときでも、語彙力が豊かであれば、さっと返信することができます。

私の同僚にも、語彙力がたいへん豊かな人がいるのですが、彼のメールの文面を見るたびに「ああ、すみずみまで配慮が行き届いていて、大人の余裕まで感じさせる。なんとも社会人の鑑だなあ!」と、感じ入っています。

つまり、その人の文章を見れば、その人の社会性がわかってしまう時代なのです。したがって、皆さんも意識して、大人らしく丁寧な言葉遣いを頭の中にストックしておきましょう。

できれば、簡単ながらも丁寧で、社会人として恥ずかしくないような文面を、何パターンか頭に入れておくとよいでしょう。「ご多忙中、誠に申し訳ありませんが」「私ごとではありますが」など、誰もが耳にしたことがあるような言い回しを、自分の語彙力のプールに入れておくのです。

また、このような言い回しは“まとめて仕入れる”ことをおすすめします。今ではビジネス用語の本もたくさん出版されていますし、ネットにもたくさんの情報があふれています。ぜひ、それらを活用するようにしてください。おそらく、返信の際のストレスが、グッと軽減されると思います。

ぜひ、こまめな返事をするためにも、語彙力を“まとめて”仕入れてしまいましょう。

▲語彙力を集めて返信のストレスを軽減させる イメージ:Luce / PIXTA