ライブの音をどこまで音源に落とし込めるか
――皆さんの音源を聴いていると、どれほどキャリアのあるバンドでも出せない、みずみずしさみたいなものが曲全体から伝わってくると感じました。それに加えて、“〇〇っぽい”みたいな感じでのジャンルに括れない魅力があると思いました。
ヨシダ:すごくうれしい……それ、まさに言ってもらいたい言葉なんですよ。青春パンクと言われることが多くあるんですけど、自分たちはそう捉えてなくて。
ハヤシ:全然、青春パンクじゃないっす。
――そんな言葉を聞いたあとに聞くことじゃないかもしれないんですけど、気になるのが、“どんな音楽から影響を受けたんだろう”なんです。
ヨシダ:まさにニュージャンルを開拓している感覚でいるので、難しいところではあるんですけど、影響を受けた音楽は表に出るような音楽ではなくて、アンダーグラウンドな世界が好きだったので、そういうとこから影響は受けていると思いますね。Wiennersの玉屋2060%さんが大好きで、作曲家としてすごく尊敬しています。
ハヤシ:僕はTHE BLUE HEARTSから入って、そこからオールドのパンクロックを聴き始めて、地元で流行っていた青春パンクをめっちゃ聴いていました。
――吉祥寺って独自の音楽カルチャーが広がっている街ですが、健やかなる子らの音楽性と吉祥寺の共通点はありますか?
ヨシダ:音楽的なつながりはないと思っています。歴史的なところで言えば、僕らは吉祥寺の文化をすごく取り入れているとは思うんですけど、いま現在の吉祥寺のカルチャーはあまり意識していないですね。
ハヤシ:大学が吉祥寺にあったので、日常的に通っている身からすると、休みの日は人が多いのでムカついていたんですよ。こういう街じゃないのになって。みんなが吉祥寺に来る理由と僕たちがいる理由はまったく違ったので、そういう意味ではギャップを感じましたね。
――お二人とも音楽以外に興味があることはありますか?
ハヤシ:僕は文芸が好きです。太宰治や三島由紀夫をよく読んでいました。
――バンドのスタイル的に、太宰よりは三島っぽいですよね。
ハヤシ:ああ、うれしいですね。そうかもしれないです。作詞においては、わかりやすい詩についてリスペクトはあるんですけど、面白くないな……みたいな感覚もあって。現代の音楽ってデカダンス的な表現が多いじゃないですか。そのなかでデカダンスじゃない、三島らしい潔癖さみたいな方向性を意識しています。
ヨシダ:僕は裁縫が好きですね。
ハヤシ:あははは! 音楽とまったく関係ないじゃん(笑)。
ヨシダ:今はやめちゃったんですけど、細かい作業が好きですね。飽き性なので、いっぱいやりたいんですよ。
――音源を聴いていると、ライブにおける健やかなる子らを、そのままパッケージにしているような印象を受けているのですが。
ハヤシ:音源を作るときって、ある程度は綺麗に形にするのが普通だと思うんですけど、僕はそれは違うんじゃないかとずっと思っていて。どういうふうにやってこうかを悩んでいたときに、ライブっぽい力強さがもっと欲しいと思って、あえて僕のボーカルを前に出ないようにしてもらってたりとか、ギターの音を大きくしてもらってたりしてもらいました。
ヨシダ:そうですね。音源の再現というよりは、ライブの音をどこまで音源に落とし込むのか、それを常に意識しています。
〇健やかなる子ら「夏の跡」Official Music Video