自分のことで精一杯だった16年前
この本のインタビューで「きちんと話せるようになったのはここ4年」と振り返るが、今の彼女の軽快な語り口からは想像ができない。
「いやいやいや、口調がくだけちゃって申し訳ないですけど……本当そうなんだから!(笑) 特に最初の頃とか全然話せてないから! この本でも1回目の書き起こしが載ってますけど……ヤバいですよ、これ。文化放送さんもよく私に任せてくれたなと思います。いきなり1人で1時間しゃべらないといけないって、いま思い出しても震え上がりますよ。
自分が子役出身ということもあって、なんとか爪痕を残さないと!っていう気持ちが根本にあるんです。でも、その分、自分のことで精一杯だったのが当時の自分ですね。リスナーさんとのキャッチボールができてなかった。今はラジオの前にいるリスナーさんを想像して、話すことができているんじゃないかなと思います。それは自分がラジオを聞くようになったことが大きいですね」
今の花澤が、当時の彼女に伝えたいことはあるかと聞いてみた。
「うーん……いや“頑張れ”と言っても頑張ってるし、“しっかりしろ!”と言ってもできないだろうし…(笑)。そのまま突き進め!って伝えたいですけど……あ、“もう少しスタッフさんとコミュニケーション取ったほうがいいよ”ということは伝えたいですね。当時は自分のことで精一杯だったから。そんな自分を文化放送さんやスタッフさんが見捨てないでいてくれたから、17年も続いている。それは言ってあげたいかな」
ラジオ好きな花澤であれば、『ひとかな』について「こうしたほうがいい」などの提案をしているのではないかと思ったが、花澤は謙遜してこう語る。
「私から建設的な提案をした覚えがないんですけど…(笑)。印象に残っているのは、一時期、スタジオが取れない時期があったんです。ラジオの収録を決まった日時でやっていなかったからなんですが、会議室で収録していたことがあって。そこで“会議室で録ってるなら、どこで録っても一緒じゃない?”ってノリで、東京タワーとか、外ロケで録っていたのは印象深いですね」
スタッフとの印象的なやり取りについても聞いた。
「“話を途中で諦めちゃだめだよ”というのは、スタッフさんから言われたことで印象に残ってます。トークを“……っていうね”みたいに自分で切ると、なんとなく締まった感じにはなるけど、なんか守りに入っているように見えちゃう。
だったらもっと、ちゃんと説明するなら説明しきる、ボケるならボケきる、というのを徹底したほうがいいということを学びました。こういうのをちゃんと考えてくださっているのに、なかなか伝えてくれないんですよ(笑)」
このゆるゆるとした空気感が『ひとかな』の魅力だ。
「今は明治さんにスポンサードしていただいているので、1日でも長くスポンサードしていただくためには、もっと良い番組にしていかないと。この番組のゆるっとした雰囲気もいいんですけど、もっと話し合わないといけないとも思うので、このインタビューを通してスタッフの皆さんに伝えたいですね。“もっと密に話し合いましょう”って(笑)」
ラジオを聞くキッカケは『アルピーのANN』
現在ではラジオリスナーとしても知られている花澤。そもそも、ラジオを聞くようになったキッカケはどういったものだったのだろうか。
「小説家の佐藤多佳子さんの作品がとても好きで、佐藤さんの『明るい夜に出かけて』を読んでいたら、そこに『アルコ&ピースのオールナイトニッポン』が出てきて、興味を持ったのがキッカケです。
ただ、その頃はオールナイトはすでに終わっていたので、同じアルピーさんの『アルコ&ピース D.C.GARAGE』(TBSラジオ)を聴いたら、もう面白すぎて! 外で聴いてたんですけど、笑いが止まらなくなって交差点でうずくまっちゃったんです。ラジオってこんなに面白いんだ!って。そこからですね」
今でもさまざまなラジオ番組を聞くという彼女に、ラジオから学んだことを聞いた。
「私はフリートークやエピソードトークが大好きなんです。だから、自分でもトークはすごく意識してますね。あとは、例えば三四郎さんのオールナイトニッポンでも、必ず年に1回、中山きんにくんさんをゲスト呼んだりしますよね。ああいう定番は、長年やってきたからこその楽しみだと思っているので、この番組でも『水着回』とか『クリスマス回』などの定番は意識していると思います」
最後に、今後、ラジオでやりたいことについて聞いた。
「最初の頃に作ったノベルティで、ほしいもこクリアファイルというグッズがあるんですが、セブンネットショッピングさんで番組本を購入した方に抽選でプレゼントしているのを見て、“まだあるの? どんだけ作ったんだよ!”と思ったんです(笑)。なので、新しい番組グッズは作りたいですね。まだ在庫があるらしいんですけど…(笑)
以前、山崎怜奈ちゃんの『誰かに話したかったこと。』(TOKYO FM)に出演した際に、ノベルティのボールペンとメモ帳をいただいて、“いいなあ!”と思ったんです。それで、“うちでも作ろうよ”と言ったら、ディレクターが“『ひとかな』でしか作れないようなものがいいですよ”って。“じゃあ水着をプレゼントする?”と言ったら、極端すぎるって(笑)。あいだを取って水着ステッカーにしようかな。
番組イベントも長くやってないし、公開録音でもいいし、ロケも出てみたい。やりたいことはたくさんあるので、1日でも長く続けたいですね」