新型コロナウイルスによって、エンタメ業界は大きな変革の時を迎えた。そのような激動の時期に、声優の榎本温子さんと、声優で歌手そして作詞作曲家でもある桃井はるこさんは、YouTubeにアニラジテイストな番組「榎本桃井のエモエモ90 ‘s(以下 エモエモ90’s)」を作りあげた。

2020年9月から毎週日曜日の午後21時頃から交代で、それぞれのYouTubeチャンネルで放送を続けている。配信環境は自分たちで用意して、スポンサーに頼らずに独自の収益体制をDIYで構築。時には業界人を番組に招くことも。なぜYouTubeに独自で番組を展開したのか? これまでの軌跡、そして今後の展望を聞いた。

ブルーオーシャンを探して「アニラジ」テイスト

――本日はよろしくお願いします。はじめにエモエモ90'sの番組の成り立ち、コンセプトを簡単に教えてください。

榎本温子(以下、榎本)  私がモモーイちゃん(桃井)に2020年の9月にYouTubeでのコラボをお願いしたのがキッカケです。最初のコラボに手応えを感じて、毎週日曜日にエモエモ90’sとして定期放送していくようになりました。

〇記念すべき初コラボの様子

桃井はるこ(以下、桃井) あっちゃん(榎本) からオファーの連絡をもらったのが2年前か!

榎本 モモーイちゃんは柔軟に動ける人でPCも強いから(笑)。今は声優さんでYouTubeをされている方が増えてきましたが、2020年当時はあまりいなくて。番組のコンセプトはモモーイちゃんが提案してくれました。「アニラジ(アニメ関連のラジオ)テイストでいこう」って。

桃井 「お互いが喋りやすくて、誰もやってないテーマは何かな……」って考えたら、アニラジが思い浮かびました。私たちは、これまでたくさんアニラジもやってきましたしね。あっちゃんとだと安心して雑談ができるので本当に助かってます。

――エモエモ90'sという番組名はどのような経緯で決まりましたか?

榎本 おたっきぃ佐々木さん(ラジオディレクター)が、番組中にチャット欄で提案してくれて決まりました。

桃井 すごいよね。だって、榎本の「え」と桃井の「も」でエモだし。90年代の「エモ」いことを喋るし、いろいろな意味が掛かっている。さすが、アニラジの歴史を作ってきた男だよね。エモエモ90'sのために、プロ仕様ジングルまでプレゼントしてくれたし。

過去を掘り起こすことで元気になれる

――配信は基本的にTV電話を活用した非対面ですよね。

榎本 そうですね。番組開始してから対面で収録したのは1年後でしたね。直近で会ったのは、モモーイちゃんの7月のライブにゲストで出演したときですね。12月17日にモモーイちゃんのライブにゲストで呼んでもらってるから、また会えるね。

桃井 12月17日に渋谷のVeats Shibuyaで開催しますので、興味のある方はぜひ(笑)。

▲2022年7月に開催された桃井さんのライブに出演された榎本さん

――対面じゃないのに淀みなく話すことができるのはすごいですよね。エモエモ90’sはコロナ禍の時代に誕生しましたよね。お二人を取り巻く環境は変わりましたか?

桃井 変わりました。当時、決まっていた活動も延期されてしまいましたからね……他にも発表はしてなかったけど、スケジュールが押さえられていた全てがキャンセルになりました。

榎本 スケジュールがどんどんキャンセルになっていって……。コロナ禍が始まったばかりの頃は、社会の全てが止まってしまって、先行きが不透明なときに未来のことを考えるのは憂鬱でした。

――専門家ですら、わからないことばかりでしたし。

榎本 死の恐怖が隣にあったというか、家を出ないという選択をするしかなかった。

――生活に制限がかかり、仕事ができなくなり……あの時期は皆が大変でしたよね。ステイホーム期間の、人が誰もいない渋谷の街は絶望的でした。

桃井 仮面ライダー龍騎のミラーワールドみたいでしたね。

榎本 エモエモ90'sでは、コロナ禍だからこそ未来じゃなく過去に注目しようと思いました。希望が見えない状況で未来を語るのはナンセンスでしたし。輝いていた90年代のアニメなどの文化を改めて振り返ることで、まだ語られてないステキなことを山ほど発見できて元気づけられました。

桃井 「改めて知る」ってことが何度もあったよね。過去から新しいものを発見すると、すごく元気が出ます。心が畑だとすると耕されていくみたいな感覚があって。

榎本 私はエモエモ90'sをやっているおかげで、Withコロナの社会を元気に生きていけていると思います。何気ない雑談ってすごく元気が出るし、対面できなくてもたくさんのリスナーさんたちとつながっている感覚になるし。リスナーさんたちも元気が出てるのがわかります。

桃井 人間って食べて寝てるってだけじゃ生きていけないんですよ。やっぱり「◯◯があるから頑張ろう!」みたいな生き甲斐が必要です。自分を応援してくれているみんなの楽しみになるようなことをしたいと思ったとき、タイミング良くあっちゃんが声かけてくれたんです。