現在、東京女子プロレスの頂点であるプリンセス・オブ・プリンセス王座のチャンピオンベルトを腰に巻いているのは、正真正銘、現役のアイドルである。

アップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩(みう)。

今から7年前、アイドルとプロレスの活動を同時に展開する、という二刀流ユニットの立ち上げの際、1期生オーディションに合格した渡辺未詩は、ずっと新しい道を模索し、開拓してきた。そんな彼女にニュースクランチが話を聞いた。

▲渡辺未詩【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

活動初期は賛否両論あった

東京女子プロレスの大会は、まずアップアップガールズ(プロレス)の歌のコーナーからスタートする。つまり、アイドルのライブがオープニングアクトとなっているのだが、正直、スタートした当初は大歓迎されたわけではなかった。

「賛否両論、ありましたね。プロレスを見に来たのに、なんでいきなり歌を聴かされなくちゃいけないんだ、とか。確かにその意見もわかるんですけど、例えばプロレス自体を初めて見る方とかには、歌があることで緊張がほぐれたり声が出しやすくなったりすると思うんですよ。歌って誰の人生でもなじみがあるものじゃないですか?

それにプロレスを初めて見る方って、なかなか声を出して応援することも大変だと思うんです。アイドルのライブだったら、声を出すところも決まっているから声を出しやすいんですけど、プロレスの場合、そういう決まりはない。

だから、まずは私たちの歌のコーナーで声を出してもらって、プロレスの会場で感情をオープンにするきっかけを作りたいなって。これはずっと心がけてきたんですけど、コロナ禍で声出し禁止になった期間を経て、より強く思うようになりましたね。まずは声を出しやすい環境づくりをしよう、と」

チャンピオンになったことで基本、メインイベントを務めるようになった。メインで勝ったら、最後はマイクで締めなくてはいけない。

そう、チャンピオンでいるあいだは、まずアイドルとしてオープニングコールをして、プロレスラーとしてエンディングを決める、という大役を担い続けることになる。これは二刀流の渡辺未詩にしかできない離れ業である。

「面白いなと感じるのは、同じ会場で同じお客さんで、皆さん同じ席に座っているはずなのに、歌のコーナーとメインが終わったあとでは、リングから見える光景が全然、違うんですよ。

試合前はワクワクしているお客さんもいれば、一生懸命にカメラの調整をしている方もいます。午前中にスタートする大会だと、ちょっと眠そうな方もいるんですけど(笑)。メインが終わったあとは、本当にいろいろな感情が表情に浮かんでいて、“あぁ、お客さんも私たちと一緒になって闘ってくれていたんだな”ってうれしくなります。“こんなに人間って表情が変わるの?”って。

表情を見ただけで、めっちゃ楽しんでくれたことがわかるので、歌のコーナーとメインイベントの両方を務めることができるのはありがたいことだなぁ〜って思います」

歌っているときはバリバリのアイドルであり、闘っているときは最強のプロレスラー。だが、試合後のマイクはちょっと緊張の糸も切れるだろうし、無意識のうちに素の部分が見え隠れしてしまいそうだ。

「そうですね。試合後は熱くなっているから、自分でも気がつかないうちに“あれっ、アイドルみたいなしゃべり方になってる”ってときがあります(笑)。生まれたときからずっとアイドルを見てきたから、基本はアイドル志向だし、素が出たらそうなっちゃうんでしょうね。

だから、締めのマイクのときはプロレスラーを意識するようになりました。私の理想としては、プロレスラーとアイドルの中間を極める締めのマイクがしたい。誰もやっていないことなので、かなり難しいんですけど(苦笑)」

今、東京女子プロレスの会場に行けば、アイドルの渡辺未詩、チャンピオンの渡辺未詩、そしてプロレスラーとアイドルの中間を極めたマイクアピールをする渡辺未詩。さまざまな彼女の魅力を味わうことができる。もう、それだけでお得感が満載ではないだろうか。

▲誰もやっていないマイクパフォーマンスを目指します