元・週刊プロレスの女子プロレス担当記者で、現在はアイドルに関しての著作で知られているフリーライター・小島和宏氏の最新刊『プロレスとアイドル』(太田出版)が、1月25日に発売された。

SKE48の荒井優希がチャンピオンになって大きな話題となったばかりだが、いまやアイドルや元アイドルがプロレスのリングに立つことは珍しい話ではなくなった。そんな令和の新常識を、プロレスもアイドルも最前線で取材を重ね、裏も表も熟知している小島氏が書き下ろしたのだから面白くないはずがない! なぜ、いま「プロレスとアイドル」なのか? ニュースクランチのインタビューで、その舞台裏に迫る。

▲SKE48の荒井優希、アップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩と完成した本を手にする著者の小島和宏【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】

荒井優希の本格参戦に「俺が書かないでどうするんだ」

――今回のタイトルは『プロレスとアイドル』。出版するキッカケはなんだったんでしょうか?

小島和宏(以下、小島) ここ数年、平成初期というか90年代前半のプロレスに関する書籍を年1冊ペースで書いてきました。まだインターネットが普及しておらず、なおかつテレビ中継がゴールデンタイムから撤退してしまった時期で、いろいろなデータが残っていなかったりもするので、当時を取材してきた者として、こうやって本として記録に残していく作業はやらなくちゃいけないことだと思っているし、すでに次回作も取材を進めています。

ただ、それと同時に現在もプロレスの現場に足を運んでいる身としては、ちゃんと「令和のプロレス」に関する本も書いておきたいなと。その流れで今回の出版が実現しました。

▲ファンを煽る伊藤麻希 ©東京女子プロレス

――現在、東京女子プロレスのリングで闘っている元アイドル、現アイドルの4選手が登場人物になっています。

小島 女子プロレスもアイドルも最前線で取材してきたので、現役のSKE48のメンバーである荒井優希が本格参戦することが決まったとき「俺が書かないで、どうするんだ」って(笑)。

実際、たくさんオファーもいただきました。ぼくの場合、アイドルといったら、ももいろクローバーZのイメージが強いと思うんですけど、そもそもアイドルの取材を始めたのはAKB48がキッカケなんです。いまでもHKT48の記事をバリバリ書いていますから、それはちゃんと取材しなくちゃなと。ただ、正直な話、荒井優希がデビューしたばかりのころはあまりノレなくて……。

――えっ、どういうことですか?

小島 それは……今回の本の主軸にもなっているので、ぜひ読んでいただければ! なんでプロレスラー・荒井優希にノレなかったのか、という理由を直接、本人にもぶつけてディスカッションもしています。

おそらく、“アイドルにプロレスができるはずがない”という偏見を抱いている方が多いと思うんですよ。プロレスファンにも、アイドルファンにも。そういう方にこそ読んでいただきたいんですよね。いろんな意味で答えが出るんじゃないかと思います。

――プロレスファンだけでなく、アイドルファンにも読んでもらいたい本なんですね。

小島 そうですね。これまでも彼女たちの記事は書いてきたんですけど、あくまでもプロレスの記事として出す場合、アイドル時代の話はバッサリと切り捨てなくてはいけなかった。元アイドルでした、とサラッと流すぐらいにしておかないと、プロレスファンの方は読んでくれないわけですよ。前置きが長すぎる、と。

――なるほど。プロレスファンからしたら“アイドル時代の話なんて関係ない”と思うんですかね。

小島 でも、「元アイドル」のひとことで片づけるには、あまりにももったいない。だって、それぞれバックボーンが違いすぎるから。

たとえば、荒井優希は現役バリバリのアイドルだし、アップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩はデビューの段階からアイドルとプロレスの二刀流で育てられてきた存在。伊藤麻希と瑞希は元アイドルで、いまはプロレス専業になっていますけど、そうなった経緯がまったく違う。

▲元アイドルで現在はプロレス専業の瑞希 ©東京女子プロレス

プロレスの記事だと「アイドルからプロレスラーになった」が書き出しになりますけど、今回の本では、その前段階の「なぜアイドルになろうと思ったのか?」からスタートして、「アイドルとして何をしてきたのか?」を経て「どうしてプロレスをやろうと思ったのか?」というところを深掘りしています。

そのバックボーンを知れば知るほど、プロレスラーとして彼女たちを見るときの解像度がグッと上がると思うんですよ。