グラビアアイドル、タレントの清水あいりが、「色気を感じる映画」について書き下ろす大好評連載。第二回はデヴィッド・リンチ監督の『マルホランド・ドライブ』を紹介。難解な映画として有名なこの作品のどこに色気を感じるのか……必見です!

ナオミ・ワッツを見て「振り幅って色気やな」

こんにちは、グラドル界の坂田利夫こと清水あいりと申します。「色気を感じる映画」について書かせていただくこの連載。私が映画大好きだからこそ、みなさんに楽しんでいただけているか不安だったのですが、「面白かった!」「自分も一時停止派でした!」「色気と内容、どっちもはみ出してるよ(?)」など様々な感想をいただき…とてもうれしい(泣)。

というわけで、今回も色気と内容を若干多めにはみ出させて、書いていこうと思います!

今回取り上げるのは『マルホランド・ドライブ』。

デヴィッド・リンチ監督による2001年公開の作品。ハリウッド・ヒルズの稜線に沿って走る道路「マルホランド・ドライブ」での自動車事故から生き延びた記憶喪失の女性「リタ」(ナオミ・ワッツ)と、彼女が助けを求めて潜り込んだハリウッドの邸宅に滞在する新人女優ベティ(ローラ・エレナ・ハリング)。リタの記憶を取り戻すために協力することにするベティだが、リタのバッグには大金と謎めいた青い鍵があった――

〇【予告編】『マルホランド・ドライブ』

 

というのが、この映画のあらすじ。なんでも、2016年にはイギリスの大手メディアBBCによる「21世紀の偉大な映画ベスト100」では栄えある1位を受賞したそう。(1位、なんて甘美な響きやの…)

私がこの映画を見たのは、いつものようにサブスクで映画を見ていたのがきっかけ。評判を見て、自分から選んだわけじゃなくて、「あなたへのオススメ」に『マルホランド・ドライブ』が出てきたから、“ナオミ・ワッツが出てるやん♪”くらいの軽い気持ちで再生したら…。

“あかん、ハマってもうた……”

そう、一度では絶対に内容が理解できないくらい難解な映画なのに、一瞬たりとも目が離せない。私がこの映画に引き込まれたのは、映画の序盤、ベティ演じるナオミ・ワッツが、映画のオーディションで監督やスタッフたちの前で、まわりのベテラン俳優を相手に、演技に見えないくらいの迫真のお芝居を演じきったところ。

映画冒頭からの彼女のカラッとした爽やかでいい子の女性のイメージを根本から覆すような、しっとりとした魔性の女になった生々しいお芝居がとにかく凄くて、一気に引き込まれたんです。

「映画がはじまってすぐやのに、なにこの振り幅……!」って。

「振り幅」こそ私が大事にしていることのひとつ。「清楚な雰囲気なのに、あんな破廉恥な下着をつけてるなんて」とか「ロリっぽい顔立ちでありながら、爆裂ダイナマイトボディやん」とか、「関西系はんなり女子なのに、東京の“湘南新宿ライン”を言いながらお尻を突き出すやん」とか、ね、振り幅って色気やなって思うんです(最後のはほんとうにごめんなさいね)。

しかも、冒頭のその振り幅だけにとどまらず、後半にかけて人が変わったような(ダイアンになってから) の不気味な闇を感じるお芝居、別人なのかと思うほどの演技に、どれだけ幅を見せられんねん! と驚いた私なのでした。

映画好きじゃない人とお付き合いした事がないねん

正直、あれから何度か見ていて、今回この映画について書くにあたってもう一度見てみたんですけど……正直、わからへん。考察も見てみたけど、それを見たところで理解できているかというと、それも自信がないんです。

でも、個人的には私、わからないと思っても“面白いからいいや”と思うタイプなんですよね。少し話が変わりますが、人が見た映画に対して「あの映画、つまんなかった」って言ってきたりする人がいるけど、私は「つまらない映画なんてない」と思うんです。“よくわからなかったから、つまんない”と言われても小さな声で"それ、自分が価値を見出だせなかっただけだからね!"って言い返したくなるんですよね(小さな小さな声で)。

そういう意味で、リンチさんの中で答えはあるんだろうけど、自分で勝手に解釈して良いんだ、と思わせてくれる映画が『マルホランド・ドライブ』だったんです。ローラ・ハリングはずっとエロ美しかった…。

ちなみに、私、映画は映画館でも、おうちでも、ひとりで見たいタイプです。もしかしたらこういう難解な映画こそ、家で誰かと見るのが良いのかも知れないけど、基本的にはおひとりさまが好き。映画館に行って上映中に喋りかけられたり、どういう意味? とか聞かれると“集中して見てよ!”って思っちゃう。家でも、例えば映画を一緒に見ているとして、その人が途中で携帯いじって見てなかったくせに、あとから“え?なんでこうなったの?”とか聞いてくる人が本当に苦手。だから全部ひとりでみたいです。

これまで付き合ってきた方とは、映画館でも家でも映画は見てきたタイプ。でも、今の旦那さんもそうなんですけど、家だと他の作業をしながら見る、って方が多いんですよね。みんな決まって「耳で聞いてるから大丈夫」って言うんやけど…それやったら映画だけに集中できる映画館に行こ、って思っちゃう。片手間で見られてしまうのは、作ってる人にも出てる人にも失礼って感覚なのかも……。

よくよく思い出したら、これまで”映画が好きじゃない“という人とお付き合いした事がないねんな、私。好きになりそうな人がいても“映画に興味ない”って言われた時点で、その人への興味もなくなっちゃうかも。もちろん、映画の趣味も合ったら嬉しいですよね。前に、好きな映画なに? って話になった時、その人が『ミスティック・リバー』が1番好き、って言ってて”この人、ええかも“と思ったことも思い出しました(照)。それぐらい私にとって映画は大切なものなんです。

前もインタビューで答えた事があるんですけど、当時受けていたレッスンの先生が、私の内向的な性格を凄く心配してくれて。“このままだと清水の人生がヤバい”って言ってて、“それは大げさやんなあ…”と思ってたんですけど、“何が好きなの?”って聞かれたんで“映画が好きです”と答えて。“どんな映画が好きなの?”って言われたんで、“ミステリーとか見ますぅ…”って答えたら、“これを見なさい!”って『メリーに首ったけ』を渡されて…これはこれで面白かったですけど、性格が変わることはなかったな(笑)。