オーディションで全否定されて号泣
あと『マルホランド・ドライブ』を見直してて思い出したのは、私もたくさんオーディション行ってたな、ってこと。オーディションをきっかけに仕事が増えたってことでいうと『上田と女が吠える夜』(『女が女に怒る夜』)のオーディションにはとても感謝しています。
というのも、そこのオーディションは女性のスタッフさんが多いオーディションだったんですけど、そのスタッフさんが、私のコンプレックスの一つでもあった喋り方やくねくねした感じ、そして人物そのものを面白がってくれたんですよね。「無理に早く喋らないで良いですよ」って言ってくれているような…「ワテら、番組作りのためやったらどんな子でも受け入れるわよ」という、そういう雰囲気を感じました。勝手な妄想やけど。笑
関西弁あいうえおもそこでスタッフの方が「あいうえお作文みたいな感じで、つなげて言ってみて?」って提案してくれて。結果、それで多くの人に知ってもらえることにつながったので、本当に感謝してもしきれない……!
反面、とっても悔しいというか、悲しいオーディションの思い出もあるんです。そこでは女性のスタッフの方に、私の喋り方から何から、もうとにかく全てが嫌いだ!って眼の前で言われて。まるで、これまでの人生全てを否定されたような気持ちになって、そんな経験はじめてだったものですから、帰り道、涙が止まらなくなっちゃったんです。そんな時に、当時のマネージャーさんから、どうだった? って電話がかかってきて”こういうふうに言われました……“って報告してたらまた涙が止まらなくなって……改札前で号泣しながら電話してました。そのオーディションがきっかけで、女性のスタッフさんがいるオーディションがちょっとトラウマっぽくなっちゃって。
たしかに、小さい頃からお姉ちゃんに「女の子に嫌われる喋り方やで」って注意されてたんです。それを改めて自覚する出来事でした。だからこそ、『上田と女が吠える夜』のオーディションで女性のスタッフさんに喜んでもらえて、“その喋り方でいいよ”と言ってもらえてるような受け入れ態勢のオーディションは本当に嬉しかったです。“このままでええんや!”と目の前が開けたような気持ちになりました。
でも、だからといって自分のこの声や喋り方を隠そうとしても、私の性格上、それはボロが出てしまうやろな、って思うんです。オーディションに向けて、変なキャラを入れたりとか、好きでもないものを一夜漬けして勉強しても、私には向いてへんやろな、って。
私も過去には“元気でフレッシュな清水あいり”の仮面をかぶって、晴れた空の下、砂浜をキャッキャ言いながら走ったこともありました。今になって振り返ると、“頑張ってたなあ……(遠い目)”と思うし、わたしはやっぱり、じっとりねっとり、畳でぬか漬けを触ってるくらいのほうが良いな、って思います。どう頑張っても無理なんです。だから、自然体で仕事できている今は、本当にストレスがないんです。"頑張って声を張る"とかはしますけどね!笑
『マルホランド・ドライブ』では、ナオミ・ワッツはローラ・ハリングにすごく嫉妬をしますよね。それこそ、殺意を抱くくらいに。私も、ある番組のオーディションで、私より全然やる気のなかった子が受かって、やる気のある私が落とされて、というのを経験して、凄く悔しかったのを思い出します。
もちろん映画みたいに「じゃあ、いてこますぞ」とはならないけど、自分がスキルアップするしかないと思って、自作の「セクシーAKB」(YouTubeに検索したらあるかもしれないです。見た事ない方はぜひ…)のダンスや童貞を殺す空手みたいなのを考えてまたオーディションに臨んだら、それがウケて受かったんです。だから、悔しい気持ちがエネルギーになるんだったら、たくさん悔しい想いをしようと思ったのも、オーディションがきっかけでした。
清水あいりはプライベートでは女優
あと、この映画のナオミ・ワッツとローラ・ハリングの演技を見ると、やっぱり演技ができる人ってカッコええなあ、と思います。私の考えで恐縮ですが、映画やドラマだけじゃなく、バラエティーでも演技している人っていますよね。自分が出してもらえる立場になって、あえて番組のために負け役になったり、悪役になったりする方のお芝居の上手さを見ていると、本当に尊敬するんです。お芝居が上手い方は、そのお芝居を視聴者の方に悟られないようにするのも、上手いなって感じます。
私自身、プライベートでは結構女優なんですよ。ほんまやで。この前も、タクシーの運転手さんに「タレントさんですか?」って聞かれて、「いいえ、脱毛サロンで働いてます」って咄嗟に嘘をついて、そこからずっと乗車中「エステティックの脱毛サロンで働く女性」として受け答えしてました。
ほかにも、前にさんまさんの番組のオファーをいただいた時に、1回目は急病になっちゃって、出演できなかったんです。それでやっと2回目のオファーをいただいて嬉しかったんですが、そこでも前日に体調を崩しちゃって。直ぐに病院に行ったんです。そしたらそこの先生がよく喋るおじいちゃんで、「喉使う仕事してる?」って言われて「そうですね、明日講演会で」って答えたら「会場キャパ何人くらい?」ってもっと踏み込まれちゃって。”なんでそこまで聞くねん“と思ったんですけど、そのキャパによって薬の量を変えるから、ってことらしく。
結局そんな効き目はなく、ただ変なアドレナリンが出てたのか、収録はばっちりだったんですけど、後日、またその病院に行ったら「講演会大丈夫だった?」って聞かれて、「そうや、この先生の前では講演会をする謎の女やった」って思い出したり…なんてこともありました。
今回は『マルホランド・ドライブ』について書いてみました。みなさんもぜひ見てみてください。たくさん色気を感じることができますよ!
※編集部注 デヴィッド・リンチ監督は2025年1月15日、亡くなられました。78歳でした。
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趣味・特技:汗だくになること・キックボクシング・映画鑑賞・音楽鑑賞
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