大河ドラマ『光る君へ』(NHK)に出演し注目を集め、1月から始まった日曜劇場『御上先生』(TBS系)では、椎葉春乃役で出演中の吉柳咲良。実写映画『白雪姫』のプレミアム吹替版で、主人公の白雪姫を射止めるなど、勢いはとどまることを知らない。そんな彼女の「ヒロイン像」を紐解いていく。

かっこよくて強いヒロインに惹かれます
取材の前に行われた撮影では、気高さをひしひしと感じさせる表情と柔和な笑顔が印象的だった吉柳咲良。そんな彼女に、ヒロインという言葉のイメージについて聞く。
「『選ばれし者』。望んでも誰もがなれるものではない、というイメージです。憧れという意味で思い浮かぶ人は石原さとみさん。でも、さとみさんは、ヒロインっていうより『主人公』なんですよね……。となると、奥田いろは(乃木坂46)さんでしょうか。人生がヒロインっぽいんです。選抜メンバーに入れなかったところから、ミュージカルでヒロイン役を射止め、アンダーのセンターも務め、今では選抜入り。目標にまっすぐ駆け上がっていく姿にヒロイン感があるなぁって。
あと、漫画のキャラクターでいうと、『進撃の巨人』に出てくるミカサ。ヒロインっていうより、私の中ではかっこいいヒーローなんですけど(笑)。時折みせる乙女チックなところが好きです。可愛いヒロインというよりは、苦労を乗り越えるかっこいい、強いヒロインに惹かれます」
吉柳といえば、大河ドラマ『光る君へ』(NHK)の最終回に出演し、話題となったことが記憶に新しい。
「みなさん、あの役どころが出てくるっていうのは予想外だったのではないでしょうか。古文が好きな方、源氏物語が好きな人からしたら、“まさかこの子が出てくるとは‼”って感じで。“元祖オタクがここで出てきてくれるんだ”という反応はすごく感じましたね。紫式部のことを一番好きであろう人物が出てきてくれた、という喜びの声は耳に届きました」
『光る君へ』の主人公・紫式部を演じたのは吉高由里子。吉高とは、別のドラマで共演経験があったそう。彼女の印象について尋ねた。
「すっごく楽しかったです! 以前共演した時は高校生だったんですけど、“20歳になりました”とお伝えしたら、“えっ、やばいじゃん! もう大人じゃん! 20歳ってなにするの!? ”って明るくお話してくれて(笑)。とても緊張していたんですけど、吉高さんが話してくださってほぐれました。でも、役に入ると急にまひろ(紫式部)になるんです。数秒前まで吉高さんだったのに……。」
吉柳は1月期の日曜劇場『御上先生』(TBS系)に生徒の椎葉春乃役として出演している。難しい役どころとのことだが、どういった役柄なのだろうか。
「台本をいただいて読んだ時に、基本的に1人で抱え込んでしまう女の子で責任感がすごく強くて、自分にも他人にも厳しくなってしまい、思い詰めがちな子という印象を受けました。ただ、すごく根は優しい子で、人を思う気持ちもあるんですけど、上手くまわりに相談ができなくて、いろいろ抱えている子だなって。
正直、台本を読むのがつらかったです。共感できる部分もいっぱいあって。……そうして読み進めていく中で“救ってくれる人がいないと、この子はいなくなっちゃう”って感じたんです。役というよりも、椎葉春乃という人間に対して、“私がここで見つけて、ちゃんと出口まで連れてってあげないと”って思っています。でも、ずっと役に入っていると私自身もしんどくなってしまうので、本番以外のところでは、みんなに積極的に話しかけにいって、なるべく(役を)切り離すようにしています」
椎葉春乃へ対する並々ならぬ思いが感じられた。学園ドラマということもあり、出演しているキャストは同年代も多く、撮影現場の雰囲気もとても良いそう。
「もうとにかく明るいですね。監督がスピーカーで“みなさん、今日1日よろしくお願いします”って言うと、みんなちゃんと声を出して“よろしくお願いします!”って言います。“松坂さんから差し入れいただきましたー!”って流れてきたら、イエーイ! フゥー!! って盛り上がったりして、本当に元気なんです(笑)。吉岡里帆さんが第49回報知映画賞で助演女優賞を受賞された時も、みんなでお祝いしました。明るくやりやすくというのを、キャストもスタッフさんも意識しているから、現場が良い雰囲気なんだろうなと感じます」
『御上先生』の主演を務めるのは松坂桃李。教師役と生徒役という間柄だが、現場でのやりとりについて聞いてみた。
「松坂さんは、すごく柔らかくて温かくておおらかで常に笑顔。みんなをずっと見守ってくれている感じです。生徒側から話しかけたら一緒に楽しくお話ししてくれるし、演技のことも相談にのってくださいます。ただ、御上先生になった瞬間に、雰囲気、声、トーンが変わるんです。本番に入った時の空気感はピリッとします」
ラジオ番組をやってみたい!
立て続けに話題作に出演し、忙しい毎日を過ごしている吉柳。そんな中、息抜きになっていることはなんなのだろうか。
「ひとりカラオケです。7時間ぐらいノンストップで歌ってしまうくらいカラオケが好きなんです。大声を出すことでストレス発散にもなりますし。時間をみつけては、しょっちゅう行っていますね。最近はback numberさんにハマっていて、散歩しながら曲を聴いています」
今後、挑戦したいことについては、こんな回答が返ってきた。
「ラジオ番組をやってみたい。しゃべるのが好きなので、お便りを読んで、いただいた質問とか議題についてずっと話したいなぁ。ありがたいことに、声を褒めていただけることが増えて、X(旧Twitter)で声だけで「今日はこんなことしてました」という、あんまり中身のない内容の話をたまにするんですけど(笑)、“面白い”、“声に惹かれる”という嬉しいお言葉をいただくので、声のお仕事もやっていきたいです。あとは、ミュージカルがとにかく好きなので、もっと出られるように頑張っていきたいです」
最後に吉柳咲良のなりたいヒロイン像を聞いた。
「主人公でありたいです。少年漫画のヒロインっぽいと言われることが多いんです。自分でも、少女漫画のヒロインっぽくはないかな……とは思いますけど(苦笑)。
自分が戦いたいし、自分の道は自分で切り拓いていきたい。もちろん、その道中は多くの方々の助けもいただきながらなんですけど、最後は自分で前に進んでいく力を持っていたいという気持ちがあります。誰かの横にいるというよりは、先頭に立って、意志、信念がある強いヒロインになりたいです」
自らの力で道を切り拓く新時代のヒロイン・吉柳咲良の気高くかっこいい姿から目が離せない。