「無理無理無理無理!!」

と、もはや何度目かわからん首振りをしつつ、無理なことを伝えるが、

とりあえずやってみ、というモッちゃんに促され──

ぬぉおぉおお!!(と、心の叫び。ジムで大声出すのは迷惑だから)

と、まあなんとかできた……。(ちなみに同じ重さをモッちゃんもやるのだが、やつはスイスイやりおるのよ。すげーなモッちゃん)

そんなふうに、モッちゃんに促されるまま、いくつかのマシンをこなし、

何度も何度も無理無理と首を横に振りつつ、なんとかやり遂げ、

モッちゃんは私と同じことをスイスイと涼しい顔でやり遂げ、

気がつけばなんだかんだ1時間ほどが過ぎていた。

「じゃ、そろそろ終わるか! 帰りに銭湯でも寄ろーやー」というモッちゃん。

そんなモッちゃんを見て、ふと疑問に思ったことをぶつけてみた。

「そう言えばさ、なんで『一緒にジム行こ』って言い出したの?」

モッちゃんは痩せることを目的にジムに通っているのだろう。

モッちゃんが、30キロ上げ下げできるようになってたりとか、いつの間にかジムで出来ることが増えているのもわかった。

でも、わざわざ私を誘ったのは……なんでなんだろう?

するとモッちゃんは

「そりゃ楽しいからに決まってんじゃん」と。

そんなモッちゃんに「……ほお」と気の抜けた返事をする私。

モッちゃん「筋トレってさ、やるまでは億劫なんだよね。でも、やり出すと結構楽しくて。

で、アツオが『一人じゃなくて誰かとやる合トレは、もっと楽しい!』って言ってたの思い出して。で、『こいつと一緒にやると一番楽しいだろうなー』ってヤツを誘ったの」

……こいつは、こんな感じで、昔からたまに恥ずかしいことを平気で言う。

モッちゃん「楽しくなかった? なんだかんだで」

そういうモッちゃんに私は「……まあ」とちょっと変な顔をして答えてみた。

モッちゃんは「腹たつな、その顔!」と笑う。

まあ、確かに、

楽しかったな、と思うのは事実だ。

そしてこの感覚は……昔こいつと行ったスポッチャに似ていた。

できないなりに笑いながらやるスポーツは……まあそこそこ楽しい。

そう思うと、ジムに行くのも……まあ悪くないか、と私は思ったのだった。

(怪我せず無事に終われたし)

そして翌日──。

「痛っ」

私はある痛みで目を覚ました。

それは、筋肉痛……ではない。

いやもちろん筋肉痛もなくはないのだが、それよりももっと痛い場所がある。

……首だ。

動かない。動かないほど痛い。

でも、昨日、ジムで首を鍛える種目なんて一つもやっていない。

考えられる原因があるとすれば……

私は筋トレ中、

何度も何度も、人生でこんなにも首を横に振ったことがないというくらい首を横に振った。

うん。それしか考えられない。

……まさか筋トレ以外の痛みで、モッちゃんのTシャツの文字

「絶対安静」

を体現することになるとは。

とりあえず私はその日、会社に行かないことにした。(リモートでは仕事したけど)

10キロ痩せるまで、あと6.5キロ──