アイドルグループ「HKT48」の6期生、梁瀬鈴雅(やなせ・れいあ)さんの連載「鈴の音」。この連載では、梁瀬鈴雅がこれまでの人生で出会ってきた「人物」について、彼女自身の言葉で綴ってもらいます。

今回は、梁瀬さんが自身のお姉さんについて綴りました。兄弟や姉妹がいる方はもちろん、いない人にもきっと、この複雑だけど大切な想いが伝わることでしょう。
▲梁瀬鈴雅(HKT48)連載「鈴の音」 第六回

当たり前のように私を優先して譲ってくれる姉

私の姉は、凪のように穏やかな人だ。

感情を表に出すことはあまりなく、声を荒らげたり、取り乱して泣いたりする姿をほとんど見たことがない。何をするにも当たり前のように私を優先して譲ってくれるし、私の理不尽なわがままさえも、彼女はすべて穏やかに受け止めてくれた。姉が自分のためのわがままを言っているところを、私は一度も見たことがない。だからこそ、一番近くにいたはずの私でさえ、彼女が本当は何を思い、何を感じているのか、その心の奥底には一度も手が届かなかったような気がする。

▲姉妹の写真(梁瀬鈴雅提供)

私たちは小さい頃から、好きなものも、何に心を動かされるかも驚くほど似通っていた。同じ遊びに熱中し、お揃いの洋服を着てお出かけをした。寝る前にはベッドの上で一緒におままごとをして遊んだ。

私はどこへ行くにもとにかく姉の後ろをついてまわった。習い事だって、姉と一緒じゃないと嫌だった。姉が中学生になったとき、まだ小学4年生だった私も、彼女が通う中学生向けのクラスに無理やり入れてもらったことがある。

▲姉妹の写真(梁瀬鈴雅提供)

当然、中学生のレベルに合わせた授業を小学生の私は全く理解できず、授業についていくことができなかった。案の定、私だけが居残りを命じられ、1人教室に取り残されてしまった。

クラスの誰もいなくなり、涙を堪えながらようやく課題を終えた頃には窓の外はもう真っ暗になっていた。ようやく帰ることを許され、心細い思いで教室の外へ出るとそこには姉が立っていた。

彼女は文句も言わず、暗がりの中でただ静かに私を待っていてくれた。どれだけの時間、一人で待たせていただろう。

「頑張ったね」

姉は一言そう言うと、泣きじゃくる私の隣を嫌味のひとつも言わずにただ並んで歩いてくれた。

▲姉妹の写真(梁瀬鈴雅提供)

その静かな優しさに、私はずっと甘えきっていた

そんな彼女の献身は、成長しても変わらなかった。

ある真冬の夜のこと。帰りの電車に揺られながら、もう夜遅くだと気づいた私は、心配をかけないよう、姉に「もうすぐ駅に着くよ」と一言だけ連絡を入れた。

最寄りの駅に着き、改札を抜けると、そこにはもう姉が立っていた。驚いたのは、彼女の髪が濡れていたこと。聞けば、シャワーを浴びている最中に私の連絡に気が付き、髪を乾かす時間すら惜しんで家を飛び出してきてくれたらしい。

冬の夜に濡れた髪のまま外に出るなんて、普通ならあり得ない。けれど彼女は、寒がる様子も見せずに「おかえり」と私を迎えてくれた。

多くを語るわけではないけれど、彼女の行動の端々にはいつも私への愛が詰まっていたような気がする。いつだって姉は私の歩幅に合わせて立ち止まり、私のわがままの隣に、当たり前のような顔をして存在していた。その静かな優しさに、私はずっと甘えきっていたのだと思う。