樋口日奈が、2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』に出演する。乃木坂46卒業後も舞台や映像で着実にキャリアを積み重ねてきた彼女にとって、今回の出演はひとつの夢の実現だったという。長年の憧れが形になったこの機会に、彼女が感じた想いや準備の過程、舞台に立つことへの覚悟、そして未来へのビジョンについて、じっくりと話を聞いた。

幕が開いた瞬間に、完全に心を掴まれてしまう
――出演が決まったときの率直なお気持ちを聞かせてください。
樋口「聞いた瞬間、震えが止まりませんでした。本当に、夢のようでした。劇団☆新感線の舞台はずっと憧れで、客席で観ているだけで圧倒されるようなエネルギーがあって、いつかあのステージに立てたら……とずっと思っていたんです。でもそれはどこか現実味のない夢でもあって。なので、実際に出演が決まりましたと聞いたときはすごく嬉しかったけど、それ以上に「私に務まるのかな」という不安も込み上げてきました」
――“夢が叶った”という大きな喜びの一方で、それを現実として受け止めるまでには、さまざまな感情が押し寄せてきたのですね。
樋口「はい。言葉にするのが難しいくらいの感情でいっぱいで、夢が叶った瞬間、嬉しさだけではなくて、これからの責任や期待や、色々な思いが一気に押し寄せてきました。でも同時に、“あの舞台に立つ自分をようやく想像できた”という感覚もありました。あと、自分の中にずっとあった憧れが報われたような気持ちもあって。努力してきてよかったな、と少しだけ自分を認めてあげられる瞬間でもありました」
――初めて劇団☆新感線を知ったのはいつ頃でしたか?
樋口「乃木坂46として活動していた頃です。確か、周りの方から「新感線すごいよ」と教えてもらって、そこから興味を持つようになりました。当時はなかなかスケジュールが合わず劇場に行けなかったので、DVDで観たり、配信で見たりしていました。でも、直接観劇できたときの衝撃は今でも覚えています」
――どの演目も迫力がすごいですよね。
樋口「そうなんです。幕が開いた瞬間、完全に心を掴まれてしまうんです。音楽、照明、アクション、役者さんの熱量……全部がドンと押し寄せてきて、気づいたら物語の中に引き込まれていました。あの体験は、今でも私の中に強く残っています。一度観てしまうと、“自分もあの空間の一部になりたい”と、どうしても思ってしまいましたね」

――今回の出演は劇団☆新感線45周年という節目のタイミングでもあります。
樋口「45周年という節目の年に出演させていただけるなんて、嬉しさと同時にものすごい重みを感じました。だからこそ、ただ出演させていただくだけではなく、きちんと意味を持って舞台に立ちたいと思っています。稽古が始まる前から、自分なりに劇団☆新感線のことを勉強しました。本を読んだり、過去の作品を観返したり、インタビュー記事を読んだり……歴史がすごく長い分、ひとつひとつの公演に詰まっている思いも深くて、それを知れば知るほど、自分がその一部になれることの責任感も増していきました」
――自主的にインプットしていたんですね。
樋口「はい、自然とそうしたくなりました。劇団☆新感線は、ゼロから始まって、ここまで積み上げてきた歴史があると思うので。その背景を知ると、今自分がここにいられることが奇跡のように思えて、だからこそ大切にしなければいけないなって。舞台に立つ責任を持とうという気持ちの方がどんどん強くなっていきました。準備をする時間すら、すごく尊いものに感じました」
――劇団の稽古場や現場の雰囲気はいかがですか?
樋口「とても温かいです。初めてで緊張していましたが、皆さんが温かく迎えて下さいました。劇団員の皆さん同士の信頼関係が深くて、でもそこにゲストとして参加する私たちにもフラットに接してくれて。自分を過度に作らなくても、そのままで受け入れてもらえる空気がある。それがすごく心地よくて、稽古場に行くのが楽しみになっていきました」
――今回は最年少になるそうですね?
樋口「そうなんです。いま27歳ですが、今回は最年少で。最近は年下の共演者の方が多かったので、久しぶりに末っ子ポジションで、ちょっと甘えさせてもらっています(笑)。でもその分、素直にわからないことは聞けるし、周りの先輩方の背中を見て学ばせてもらうという姿勢でいます。何でも聞いてねと言ってくださるので、心から安心して飛び込めています」
