アンチョビソース

くさい度数★★

ヨーロッパや南米、アフリカなどにも魚醬(ぎょしょう)のようなものがある。ヨーロッパでカタクチイワシを原料につくられるアンチョビソースはその代表である。

アンチョビ イメージ:PIXTA

アンチョビソースのルーツは古く、古代ローマに遡るといわれている。この時代の料理書の中に「ガルム」あるいは「リクアメン」という名の魚醬が掲載されていて、それらは小エビや小魚に大量の塩を加えたものを素焼きのかめに仕込み、2〜3ヵ月放置してから液体を取り出して料理に使ったことが記されている。

この名残がアンチョビソースではないかといわれている。

加える塩の量がとても多いので、発酵菌は生育できず、主として魚介類の自己溶解と熟成により、うまみとくさみが出るのである。魚醬特有のしょっぱさとにおいから、料理の隠し味として風味づけによく用いられている。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中の魚醤(ぎょしょう)を食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。