リンブルガー

くさい度数★★★★

きわめて強烈で、たいがいの大人なら思わずニヤリとするような妖艶なにおいをもったチーズの代表といえば、リンブルガーである。ベルギーが起源のチーズで、中世の修道僧がつくり始めたといわれている。

▲ベルギー イメージ:PIXTA

納豆菌と近縁のリネンス菌を使って発酵させてつくることから、どうしてもくさいのは避けられない。しかも、リネンス菌は人の体臭の原因菌でもあり、妖艶なにおいに感じるのも、また然りなのである。

オランダの研究者が非常におもしろい研究報告をしている。マラリアを媒介する蚊(ガンビアハマダラカ)が好むにおいを調べたところ、人の足のにおいと同じくらい、このリンブルガーに惹きつけられることがわかったというのである。蚊もまた、思わずニヤリとしてしまうということか。

▲リンブルガーは、においのわりに味はマイルド イメージ:PIXTA

リンブルガーは、においのわりに味はマイルドで、それほどクセがない。現在はベルギーのほかドイツとアメリカで主に生産されているようである。

自らを“発酵仮面”と称し、世界中のチーズを食べつくしてきた小泉教授に、それぞれの「くささ」の度合いについて星の数で五段階評価してもらった。 発酵食品は宿命的に、くさいにおいを宿しているが、それこそが最大の個性であり魅力なのだ。

「くさい度数」について
★あまりくさくない。むしろ、かぐわしさが食欲をそそる。
★★くさい。濃厚で芳醇なにおい。
★★★強いくさみで、食欲増進か食欲減退か、人によって分かれる。
★★★★のけぞるほどくさい。咳き込み、涙する。
★★★★★失神するほどくさい。ときには命の危険も。

※本記事は、小泉武夫:著『くさい食べもの大全』(東京堂出版:刊)より、一部を抜粋編集したものです。