新型コロナウイルスの流行によって、春先以降、ドラッグストアにはマスクやトイレットペーパー、そして除菌グッズを求める行列ができたことは記憶に新しい。また、いわゆる“巣ごもり”にあたって、冷凍食品やカップ麺、レトルト食品などを買い求めた家庭も多いことだろう。

そんなコロナ禍で、ある食材が注目を浴びていることをご存知だろうか? 全国乾麺協同組合連合会(東京)の調べでは、外出自粛の影響を受けるかたちで、2月以降の肌寒い時期にはうどん・そば・中華麺の需要が増加した。そして春先からは、賞味期限が1〜3年と長く、安価で備蓄しやすい「そうめん」が人気を集めているという。

「そうめん、やっぱり揖保乃糸」

3月頃に始まった一連の買い占め騒動時に、乾麺は一気に売り上げが急増した。パニック的需要増で、スーパーマーケットのなどの店頭から、パスタや米がすっかり消えた光景を目の当たりにした人も多いはず。

そして春先以降、夏本番を前にそうめんの動きが活発化、買いだめ需要商品のなかで、賞味期限の長いそうめんにお鉢が回ったかたちだ。とはいえ、そうめんの製造には、職人の手作業に頼る部分も多く、乾麺のなかでも手間がかかるため、夏本番である7・8月に在庫を切らさぬよう、生産者らは慎重になっているという。生産者によっては「大口顧客を、やむなくお断りしている」という苦しい胸の内も……。

▲そうめん、やっぱり揖保乃糸

そしてコロナ禍のなか迎える、はじめての夏。記録的な長梅雨のなかで食欲のない人も「そうめんなら……」という頃だろう。この時期になると、店頭でもっとも見かけるのは、数ある手延べそうめんブランドでシェアNo. 1を誇る「揖保乃糸」。揖保乃糸は、兵庫県手延素麺協同組合の熟練した職人によって作られているブランドだ。CMでもおなじみの揖保乃糸、なんと600年もの歴史を誇り、明治時代から愛されてきた超ロングセラー商品なのだ。

「揖保乃糸」公式HPによれば、兵庫県揖保郡太子町の斑鳩寺に残る寺院日記『鵤庄引付』(県重要文化財)の応永25年(1418年)9月15日の条に「サウメン」の文字が出てくるそう。これが播州地方で最も古いそうめんの記述となり、つまり約600年も前からこの地でそうめんが食べられていたということになる。その後、江戸時代に龍野藩の保護育成のもと産地化が進み、組織化がなされ、明治27年(1897年)には揖保乃糸の商標が誕生した。