60試合という異例のシーズンとなったMLB(Major League Baseball)ですが、緊迫感あふれる試合が続き、日本人選手の活躍も話題になっています。そんなMLBの最新情報を毎日伝える『ワースポ×MLB』(NHK BS1)は、選手たちのプレーやチーム戦略などに踏み込んだ解説やデータ分析で迫ることで、野球ファンから好評を博しています。

そこで前週から2回にわたり、同番組でキャスターを担当(毎週月~金曜日)している山本萩子(しゅうこ)さんに、MLBの魅力や番組の見どころについて、たっぷりとお話を伺ってきました!

※編集部より:今回のインタビューは「三密」を徹底的に避けて行いました。

ショートが大好きな私は643(ろくよんさん)派

――『ワースポ×MLB』の見どころのひとつに、スタットキャストなどを用いたデータの駆使があります。たとえば打球の角度や初速の分析など非常に新鮮です。

山本 ありがとうございます。MLBの公式データを分析、紹介していますが、ぜひ番組独自の投球分析ツール『ゼウス』にも注目してほしいです。『ゼウス』を活用することで、投球の軌道を再現しながらの解説もできるようになりました。解説をするうえで「可視化できる」ので、ピッチャーの解説もバッターの解説もすごく画期的というか、番組を見ている方にも伝わり方が違うのではないかなと思います。

――データを使って投球の軌道を可視化できるのも新鮮です。

山本 『ゼウス』により新たに見えてくることもあると思います。「野球の魅力をバランス良く伝えられたらいいな」という気持ちは強いですし、そんな番組にできたらいいですねって、スタッフの皆さんといつも話していますね。

――あとは番組の特集も個性がありますよね。昔からの野球ファンからすると、データばかりだと「こんちくしょう」ってなるんですけど(笑)、たとえば昨年の「643(ろくよんさん)のゲッツー」の特集は最高でした。

山本 ありがとうございます。もう私の得(とく)すぎるコーナーでした(笑)。

――ちょっとアナログというか、野球本来の楽しみ方が詰まっていましたよね。そんなに643がお好きなんですか(笑)?

山本 643がいいんです。463(よんろくさん)より643派です(笑)。私、ショートの守備が大好きなんですよ。643の流れの中で、ショートの動きの美しさというのが私の中ではすごく魅力で。ひとことで言うなら「美」なんです。たとえば取ってすぐセカンドに送球する時の、体をちょっと翻す――この角度が好きなんです。ほかにもダイビングキャッチやグラブトスなどいろいろあると思うんですが、643のダブルプレーはすべてのプレーに魅力がありますから好物ですね。

――本当に643がお好きなんですね(笑)。でもNHKの番組というと、良くも悪くも硬いイメージがあるんですが、643のような特集を見ると意外性もあってすごく楽しいんですよね。ちなみに、山本さんから「こういう企画をやってみたい」といった意見を積極的に出したりするんですか?

山本 番組スタッフの皆さんが私の意見や希望を聞いてくださる、というのが大前提としてあるんですけど、たとえば「次はこういう企画をやりますが、どういう風に伝えたいですか?」「〇〇選手について次は取り上げますが、気になることはありますか?」と具体的に聞いてくださるんです。私も生意気なことに試合をしっかり見ているもので、結構言っちゃうこともあるんですよ。でも「一番いいものを作りたい」っていう強い思いを、スタッフの皆さんがお持ちなので、私にも意見させてくれる環境があるのだと思います。

――逆に言えばスタッフの皆さんも、山本さんが野球を勉強しているっていう信頼があるんだな、と。お互いに信頼があってこそ、643のような面白いコーナーが生まれるんだなっていうことを、お話を聞いてすごく感じました。

山本 私的にも、643のゲッツー特集がちょっと転機というか「やっぱり野球が大好き」という気持ちを伝えたら、喜んでくださる視聴者の方がいるんだっていうのを実感できました。あと、たぶん誰よりも番組を楽しんでいると思うので、私。