中学までは軟式で、高校時代は甲子園に出場したもののエースではない。大学時代は関西六大学野球が舞台で、プロ入り先は阪神タイガースの陰に隠れがちなパ・リーグのオリックスバッファローズ。決して目立つ存在ではなかったけれど、コツコツと努力を積み重ね、今ではド派手なMLBの舞台で奮闘するメジャーリーガーの平野佳寿投手が、自らの持ち味である「地味」の哲学について語ってくれました。
※本記事は、平野佳寿:著『地味を笑うな』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
「地味」があるから「派手」が輝く
「地味」の反対は「派手」です。「派手」とは、「華やかで人目をひき、目立つこと」。なぜそうなるのかといえば、それは他を圧倒するぐらい優れているからです。
野球の世界にもスーパースターがいます。
いまのMLBの投手でいえば、2019年にアストロズで20勝をマークしたゲリット・コール(ヤンキース)や、同じく21勝でア・リーグのサイ・ヤング賞に輝いたジャスティン・バーランダー(アストロズ)。あとはジェイコブ・デグロム(メッツ)、マックス・シャーザー(ナショナルズ)、マルコ・ゴンザレス(マリナーズ)たちがド派手に輝きまくっています。
野手では、2019年オフに12年という超大型契約を結んだMVPとシルバースラッガー賞の常連マイク・トラウト(エンゼルス)。やはり屈指の打撃力を誇るムーキー・ベッツ(ドジャース)やクリスチャン・イエリッチ(ブルワーズ)、それに2019年にイエリッチとの首位打者争いでわずかに後れを取ったクテル・マルテ(ダイヤモンドバックス)らは、文句なく燦然と輝くスーパースターです。
そして中には、投打両方で光り輝く大谷翔平くんのような選手までいるのだから、笑ってしまいます。
ですが、彼らスーパースターたちが、なぜ輝きを放っているのかをよく考えてみていただきたい。彼らが圧倒的に優れているというのは、普通の地味な選手たちと比べて傑出しているということにほかなりません。
もしも地味な選手たちがいなければどうでしょう。たちまちスターたちはみんな普通の選手になってしまいます。
もし100人の人がいて、100人とも派手だったら……。それはそれで誰の目もひかず、目立たちません。派手でなくなってしまいます。
たくさんの「地味」な人がいて、はじめて少数の「派手」な人の存在が浮き立ってくる。考えてみれば、ごく当たり前の話なのです。