30分歩けばストレス解消にもなる
実験ではあくまでも「歩きながら作業をする」ということなので、歩きながらアイデアを出したり、歩きながら勉強をすると効率が上がるということです。
確かに、ふとアイデアが思いつくのは、机にかじりついているときより、気晴らしの散歩の途中だったり、通勤中だったり思いがけない瞬間であることが多いのも納得です。
この結果が重視されれば、もしかすると近い将来「ウォーキング会議室」というものができて、参加者全員で歩きながら会議することになるかもしれません。
なぜ歩きながら考えると、よいアイデアが浮かぶのでしょうか。それは脳に送られる酸素の量にあります。研究によると、歩いているときは脳への血流が増え、その結果、平常時より3割から5割アップの酸素が送り込まれています。それにより脳は活性化されているのです。
この歩いているときの血流アップは、下半身に仕掛けがあります。人間の筋肉の3分の2は、腰から下の下半身に集中しています。ウォーキングすると、筋肉がポンプの役割を果たし、重力に逆らって下から上へと脳への血流を促進していきます。
特にふくらはぎのポンプは能力が高く「第2の心臓」と呼ばれています。そのような仕組みが備わっているということは、人間の身体は、歩くことを前提に設計されていると言えるでしょう。
歩くことによって、脳をはじめ全身への血流が飛躍的にアップし、活性化されるのです。それであれば「基本仕様」に準じて、もっともっと歩かなければ、人間の持つ本来の性能が発揮されないのかもしれません。
「脳とウォーキング」の関係で言えば、メンタル面でのリラックス効果も大いに期待されています。20分くらい歩くと、脳内から幸せ物質といわれるドーパミンやβーエンドルフィンが分泌されます。研究によるとβーエンドルフィンの効果は、運動後3~5時間も続くため、気持ちが向上されるというわけです。ウォーキングのハッピー効果はさらにあります。
さらにもう少し時間をかけて30分くらい歩き続けると、脳内にセロトニンという物質が分泌されます。リズム運動などで分泌されることで知られているセロトニンですが、幸福感をもたらす作用があり、リラックス効果も高く、興奮しすぎた脳を抑制してくれます。セロトニンが不足するとうつ病のリスクが高まるとも言われています。
これらの幸福感をもたらすホルモンは、ストレスから脳を守ってくれます。朝歩くもよし、夜歩くもよし。幸せな気持ちにさせてくれるというウォーキングは、最強の運動ともいえます。