重篤な病気を引き起こす可能性のある「肥満」を予防するための“ちょい足し”食習慣とは? 名医・今津嘉宏氏が、驚きの新生活習慣を提言してくれました。日々の生活で無理することなく実践できる知識、これはぜひ覚えておきましょう。

※本記事は、今津嘉宏:著『115歳が見えてくる“ちょい足し"健康法』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

朝と昼に摂取したエネルギーは消費に回ります

肥満の対策として、サプリやトクホに頼る人も多いことでしょう。さまざまな生活習慣の中でも、重篤な病気を引き起こす可能性があるのが、言うまでもなく「肥満」です。

食事に関しては「しっかり食べて栄養も摂りたいが、太りたくない。でも、美味しいものもカロリーがあるものも食べたい」という願望があることでしょう。

「太る食事」というと、みなさんがすぐに思いつくのは、焼肉や飲んだあとの締めのラーメンですよね。ただ、それは単純に脂っこいもの、カロリーの高いものという発想です。たしかにそうした食事は太りやすいのは事実です。ですが、どうしても食べたいというのなら、朝・昼・夕の食事の割合や運動、食事時間などに気を配れば食べてもよしとしましょう! ということを私は提案します。

まず、朝・昼・夕の食事は、どういう割合がいいのでしょうか。

例えば、朝を抜いてもいいのか、あるいは朝ご飯をしっかり食べて、あとは少なめにするのがいいのか、それともバランス良く1:1:1がいいのか……などといろいろと理想論が語られています。

いったいどれがいいのか――私はいつも言っていますが、いくら健康的だと言われても、できなければ意味がありません。自分ができることを実行するポイントとして、絶対的な論理だけは知っておいて、それを応用していくということです。

“太る”ということに関しては、朝・昼はともかく、なんとなく夕飯が大きなカギを握っている、ということはみなさん気が付いていますよね。

食事の絶対的な理論の根底では、やはり夜にカロリーが高いものを食べると、肥満につながるということがはっきりしています。

なぜなら、人間も動物なので、夕方以降に食べたものは体に蓄積するからです。暗くなってからは獲物が獲れなくなるので、食べたら食べた分だけ、とにかく貯蓄に回す。夜はもう寝るだけでエネルギーを使わないので、体にたまっていくのは当然でしょう。

一方で、朝は起きた時から動いているので、朝と昼に摂取したエネルギーは消費に回ります。つまり、朝昼たくさん食べても体に貯蓄されず、筋肉になったり、脳を働かせたりするので消費していくわけです。

子どもたちは、昔から「朝ごはんを抜くとダメだよ」とよく言われます。実際、朝ごはんを食べた子と食べない子だと、算数も国語、体育も成績が全然違います。もちろん、朝ごはんを食べない子のほうが成績は悪いというデータがあるのです。

朝にエネルギーを入れておかないと、人間の体は動きません。ですから、もし食事を抜くなら、朝は抜いてはいけません。しかも、朝食べた分と夜食べた分を比べると、朝に食べた分は活動するエネルギーとして消費してくれますから、朝に摂取したエネルギーは体に残らないので太りません。しかし、夜に食べた分は全部貯蓄されるので、太るのを1.5倍加速させてしまいます。

▲朝と昼に摂取したエネルギーは消費に回ります イメージ:PIXTA

典型的な和食が実は朝食としては満点!

朝昼夕に食べるバランスを考えると、もし昼ごはんを食べる時間がないのだったら、昼は抜いてもいいから、朝ごはんをたくさん食べたほうがいいでしょう。しかし、昼を抜いてお腹が減って夕ごはんをいっぱい食べてしまっては太るので、それならば午後の3~4時に、おやつでもおにぎりでも食べておいたほうがいいわけです。

午後3~4時に何かを食べても、まだ仕事はあるでしょうし、帰宅時に駅から自宅まで歩くことで、少しは運動する形になって消費するはずです。

ですから、夕ごはんを食べる時間が遅くなりそうな時は、早めにご飯類を食べてしまうというのは、体に無駄なエネルギーをため込まないという意味ではいいことです。

もしやむを得ず、朝か昼のどちらかを抜かなくてはならないなら、どちらかをしっかり摂るようにすれば全体の割合的としてはいいでしょう。

過去に「朝ごはんを食べるのは、消費のためのカロリーを摂って、血糖値を上げるのが目的ならば、チョコバーでもいいのではないか?」という意見もありました。たしかに「脳を動かすのはグルコース(ブドウ糖)だから、甘いものだったらいい」と言われてきましたが、最近はこれもよろしくないことが分かってきました。

実は糖分単体、炭水化物単体、そして脂質単体では、上手く体で使えないからです。やはり、それぞれを組み合わせないと効果が発揮できないようです。

一番いい組み合わせは、グルコース――甘いものと肉――タンパク質。これが非常に効率的でしょう。お米やパンなどの主成分であるでんぷん質も、胃や腸で消化されるとブドウ糖となって吸収されるので、朝はごはんに魚、それに大豆(納豆)や玉子などのタンパク質を加えることが、一番効率良くエネルギーを吸収できて体にいいでしょう。

▲典型的な和食が実は朝食としては満点! イメージ:PIXTA

ここでもやはり「バランス」という言葉が出てくるのですが、それぞれの比率までは考えなくても結構ですから、必ず炭水化物とタンパク質を組み合わせる、つまり、単体ではダメだということを知っておくことが大切なのです。