いよいよ佳境を迎えたアメリカ大統領選。メディアでは「バイデン氏優勢」と報じられているようにも思えるが、実は以前からバイデン氏には「息子・ハンター氏と中国の関係」という爆弾を抱えていると言われていた。この点について、トランプ陣営は猛烈に批判を繰り返している。そこで国際政治学者である高橋和夫氏に、ハンター氏の人物像について聞いてみた。

※本記事は、高橋和夫:著『最終決戦 トランプvs民主党』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

薬物使用で海軍予備役から除隊処分を受けた

バイデンの評判に傷をつける可能性のあるのが、息子のハンターである。この次男は、まだバイデンが副大統領だった2014年に、コカインを使用して海軍の予備役から除隊処分を受けている。

ハンターは、2014年から2019年にかけて、ウクライナのガス会社の取締役を務めている。期間の大半は、父親が副大統領だった時期と重なる。

なぜエネルギーの専門家でもないハンターが、取締役に就任して多額の給与を受け取っていたのか。トランプ大統領は、ウクライナの大統領に対して、この件を調査するよう求めた。

▲薬物使用で海軍予備役から除隊処分を受けたハンター氏 出典:ウィキメディア・コモンズ

しかし、その際にトランプが「調査をしなければアメリカの援助を止める」と、ウクライナの大統領を脅したとの嫌疑が浮上したのだ。

トランプが、外交を政治的なライバルを攻撃する手段に利用したとの批判が出て、2019年12月にはアメリカ下院が権力の乱用などの罪で、トランプ大統領を弾劾する決議を可決した。なお下院では民主党が多数を占めている。そして上院で弾劾裁判が始まった。

アメリカの憲法では、下院が弾劾の決議を可決した場合には、上院が弾劾裁判を行い、裁判の結果次第では大統領が罷免される。大統領を有罪にするには、上院の定数100名の3分の2以上の賛成を必要とする。だが現在の上院では共和党が多数を占めているので、その可能性はない。

2020年2月、予想通り上院はトランプの行為は弾劾には当たらないとして、無罪の評決を下した。民主党員は有罪の投票をしたが、多数を占める共和党員が、1人を除き全員が無罪の投票を行った。

有罪票を入れた1人は、ロムニー上院議員であった。2012年の共和党の大統領候補者であり、オバマの再選時のライバルであった。ロムニーは、トランプ支持者からは裏切り者扱いをされ、民主党支持者からは信念を貫いたと評価された。