新型コロナの感染拡大が止まらないアメリカ。トランプ大統領の評価が問われる2020年大統領選挙が間近に迫っている。国際政治学者である高橋和夫氏によると、この秋に予定されているアメリカ大統領選挙を前に、民主党候補から撤退したサンダースの影響力が着実に大きくなっているという。
※本記事は、高橋和夫:著『最終決戦 トランプvs民主党』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
敗北後にサンダースを語る意味
2020年アメリカ大統領選挙の民主党候補がバイデンで決まっている中で、まだサンダースの政策を語る意味があるだろうか。私は大いにあると考えている。
バイデンが本選挙で勝利を収めるためには、サンダース支持者の票が必要となる。2016年のヒラリー・クリントンの敗北の大きな理由は、サンダース支持者が本選挙でヒラリーに投票しなかったからである。中にはトランプに投票したサンダース支持者さえいた。ヒラリーはこの層に見捨てられ、本選挙で敗れた。
その過ちを繰り返さないためには、バイデンは自分の政策をサンダース寄りにして、その支持者の票を取り込む必要に迫られている。
実際、バイデンはすでに、教育面や環境面でサンダースの政策に近づく努力をしている。バイデンは、公有地でのシェール・ エネルギー開発に反対し始めた。これはサンダースの革新的な環境エネルギー政策に、バイデンが歩み寄ったとみなされる例のひとつである。バイデンは、恐る恐るサンダースの大胆な政策に近づきつつある。外交面でも同じような傾向が見て取れる。そうであれば、バイデンが近づきつつあるサンダースの政策を知る必要がある。
また、たしかにサンダースは民主党の候補者指名の獲得はあきらめたと発表したが、同時に残された予備選で自分(サンダース)に投票して欲しいと支持者に呼びかけている。民主党予備選の投票用紙には、まだサンダースの名前が印刷されている。なぜ、指名をあきらめた自分への投票を求めるという不思議な訴えをするのだろうか。
それは、一人でも多くの代議員を獲得することで発言力を増し、民主党の選挙綱領に進歩的なプログラムを書き込ませるためである。サンダースの選挙キャンペーンは終わったが、アメリカ社会を変えて行こうとする運動は終わっていない。