関西を中心に活動している、お笑いコンビ・さや香。ツッコミの石井が得意とするダンスを活かしたネタで『歌ネタ王決定戦2020』の優勝をつかみ、昨今注目を集めている彼らは、結成4年目で『 M-1グランプリ2017』のファイナリストとなった実力派漫才コンビ。

斜めの角度から、自分の感情や心情をストレートにぶつけて笑いを誘う新山と、そんな新山に振り回されながら、どこか冷静にたしなめていく石井。誰にも真似のできない感性を武器としながらも、そこに満足せず、二人はネタを更に強固な武器にすべく、ネタへの探究を続けている。

※本記事は『+act. ( プラスアクト )2020年12月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

あぁ、東京で4つもお仕事頂けるんやなぁって。

――『歌ネタ王』で優勝後、全国区の番組に出演する機会が増えてますよね?

石井 そうですね。東京の番組がいろいろと呼んでくれはるのは、ほんまにありがたいです。

新山 僕に関しては、今日この取材が4つ目の仕事で。あぁ、東京で4つもお仕事を頂けるんやなぁって。『歌ネタ王』でこんなに東京へ来させてもらえるようになるとは予想してなかったので、ありがたいですね。

石井 今日はミキが出ている番組に出させてもらったんですよ。大阪で一緒にやってたミキの亜生とは同い年で同期なので、わりと距離が近くてフランクに接してるんですけど、衣裳とか着てセットに馴染んでる二人に、うわぁ、ちゃんとテレビの人やみたいなことを思って、ちょっと緊張してしまいました(笑)。二人との差みたいなものも見えて、早く追いつきたいなとも思いましたね。

新山 『真夜中のブランチ』っていう新番組の収録やったんですけど、早く昴生さんからダメ出しを聞きたい......! 僕らなりに頑張ったんですけど、もうちょっと落ち着いて、うまいことやったほうがよかったのか、もっと前に出たほうがよかったのか、ラインがわからへんから。

石井 せやなぁ。

新山 だから早よ会いたい。で、どうやった?って聞きたいですね。

―― (笑)。そもそも『歌ネタ王』は、本職とは違うところにある賞レースだと思うんですけど、挑戦しようと思ったのは?

石井 以前から出ていて、その時は負けてしまったんですけど、MBS(毎日放送)の『歌ネタ王』を担当しているプロデューサーさんが「ぜひ出て下さい」って言って下さって。いいネタもあったんで、結果はどうであれ自己紹介的な特技芸になるかな、くらいの気持ちで気負わずに出た感じですかね。

新山 コロナの影響で、新ネタもできてへんから出やんとこうかって思ってた時に、声をかけてもらって。優勝したネタも2年前には既にできてたネタやったんですけど、石井が濃厚接触者になってしまって、決勝当日が自宅待機明けやったので、2本目のネタはあの日が初出しやったんです。負けてもしゃあないみたいな状態やったんで、賞レース独特の緊張感をそこまで持たずにやったから、優勝できたんかなと思ってますね。

――その前に『ザ・ベストワン』でもダンスネタで注目されたりと、優勝の兆しみたいなものもありましたよね。

新山 その前に、関西でやってる『オールザッツ漫才』っていう番組でもやったんですよ。それを『ザ・ベストワン』を作ってる方が見て下さって、あの番組に出られたのでウケるのは分かってたんですけど、2年前くらいから出しどころを探していて。で、『オールザッツ漫才』でやってみたんです。

そこから『ザ・ベストワン』に出られて『歌ネタ王』も獲れたんで、あの温存してた2年間って、なんやったんやろう?って感じが今はあります(笑)。まぁ、昨年のラニーノーズが優勝したタイミングで、このネタをやっていても負けてたと思うので、運もあったのかもしれないですね。

――あのネタで、さや香さんの印象が変わったという人も多いんじゃないかなと思うんですが。

石井 SNSをエゴサーチすると、関西以外ではダンス部のネタが面白かったと言ってくれる人が多かったですね。けど、関西の劇場でずっと観てくれてる人が「いや、さや香は漫才やから! あれはサブネタやから!」って主張して、バチバチしてはったので仲よくしてねと思いつつ(笑)。まぁ、多くの人に知ってもらえるきっかけになったことは、よかったですけどね。

新山 あのネタを観て、石井がダンスしてるからボケやと思ってる人もいるみたいですし、ボケの人とかツッコミの人じゃなく、さや香のCDを忘れたほうと忘れてないほうっていう言い方をしてる人もTwitterにいて。

石井 え、そういう認識?

新山 うん。『M-1』決勝にも1回行ってますけど、こんなに認識って移り変わるんやなと思ったというか。まぁ、さや香のネタで一番好きなのはダンス部って書いてるのを見ると、ちょっと残念な気持ちになりますけど。

石井 SNSでバズったような感じやと思うんで、このネタをきっかけに劇場へ漫才を観に来てもらえたら。で、観てもらった時にウケるような面白い漫才ができればいいんかなって思ってます。

新山 そうですね。ダンスネタに負けへんようにやろうっていう感じですね。

――拠点とする大阪では、漫才をメインにやられているんですよね。今年は緊急事態宣言の影響もあって、新ネタ作りもままならない状況だったと思いますが。

石井 ただ、賞レースはいろいろとやってくれているので、めちゃくちゃありがたいです。僕らは9年目で、芸歴10年超えたら参加できなくなる賞レースもあるので、関西におる以上は賞レースを獲れるだけ獲りたいなと。いやらしい言い方ですけどね。もちろん『M-1』優勝っていうのを一番大きく掲げて漫才ばかりやってますけど、真面目にやってたら関西の歴史ある賞レースも狙えると思ってやってます。

新山 ただむずいっすね、漫才は。周りからは僕らは漫才のスタイルがあるって言われるんですけど、実際にやってる身からすると、まだ定まってないというか。例えばミルクボーイさんのようなフォーマットがある感じでもなく、いろんなことをやっているので。

石井 うんうん、そうやなぁ。

新山 ちょっとだけ方向性が見えてきたかなという感じもあるので、ちゃんとかたちになれば『M-1』優勝も見えてくるんかなって思ってます。

さや香さんへのインタビュー記事は、11月12日発売の『+act. (プラスアクト) 2020年12月号』に全文掲載されています。