BARは自分を写す鏡かもしれない
誰も寄せつけない扉の向こうに、この店はある。
最初その前を通った時、これはなかなか入りづらいなと思った。
中の様子が全く見えない。黒い重そうな扉がドッシリと閉まっていて、そこを開ける勇気が出なかった。でも気になる。こういう時は飛び込んでしまうに限る。ある日、恐る恐る扉を開けた。
『La Vie(ラヴィー)』との出会いはこんな感じだった。重い扉の先には、くの字のカウンターと奥にテーブル席がひとつ。カウンターの中にマスターが1人。
ワインBARらしい。
確かに、店先の樽の上にワインの瓶がたくさん置いてあった。
それがもう10年前だ。それから隠れ家的なこのBARが気に入って、今も通っている。自分を跳ね返していた扉も、今は外からこちらを守る盾のように頼もしく感じている。
結局、良く思ったり悪く思ったりするのは自分に原因がある。そのもの自体は何も変わっていないのにね。
ワインBARとはいえ、ビールもウイスキーもあるんだけど、せっかくワインBARなんだから、いつもオススメのワインをもらうようにしている。こういう自分では選べない、おいしいお酒を飲むのがBARの楽しさだ。スパークリングワインから入って、白ワインをもらった。
ワインは普段あまり飲まないんだけど、オススメされるものはいつも間違いなくおいしい。そしてなんと言っても、ここはご飯がなんでもうまいのだ。最初のお通しから心を掴まれる。自家製の焼き立てクルミのパン。
これがめちゃくちゃ柔らかくて最高。この時点でもう普通のBARじゃないよね。自家製のパンを焼き立てで出してくれるBARを他に知らないです。もうレストランのやり方だもんね。