経験を積むことで想像力も広がる

そもそも人間が感動するには、情報が必要です。例えば『失楽園』のような大人向け恋愛ドラマを、子どもが見ても全く面白くないでしょう。

しかし、ある程度経験を積んだ大人が見れば、そこで描かれた感情に共感し、感動することができるようになります。

例えば、同じ悲しい曲を聴いても、なにも欲望を持っていない人なら「なんか悲しい感じの曲調だね」と思うだけかもしれませんが「作曲家として成功する」という欲望を持った人が聴けば、メロディやアレンジに込められた、より深く細かい感情に気がつくことができるかもしれません。

好きなことにワクワクしながら、脳をフル回転させて情報を探しながら生活していると、普段は見過ごすようなちょっとした感動でも、そこに“感情”がタグ付けされ、引き出しにしまわれていきます。

そうして得た情報や感動の引き出しが、また新たなことへの感動を見出だす道筋となっていく。

そして「感情の紐づいた情報」の引き出しが多くなれば、本を読んだり映像を見たりという疑似的な体験からも、感動と感情の紐づいた情報を引き出すことができるようになり、リアリティーを感じることができます。

このようにして養われる「想像力」は、あらゆる場面で「クリエイティブ」となって発揮されていくようになるでしょう。

頼まれ仕事の「資料作り」もスタンス次第

ミュージシャンを例に出しましたが、クリエイティブであるというのはなにも、いわゆる「クリエイター」と呼ばれる仕事に限った話ではありません。

“感動”の種類をたくさん持ち「感情のタグ付けがされた情報」をたくさん持っている人は、それを人に与えることで、人を感動させる手段を持つことになります。

例えば、資料作りひとつをとっても、ただ事務的に情報を書き連ねるのでなく、ストックされている「感情がタグ付けされた情報」を引っ張り出して、見た人をワクワクさせるような構成やレイアウトで資料を作る、などというスタンスは、とてもクリエイティブな仕事の仕方ではないでしょうか。

頼まれ仕事の「資料作り」もスタンス次第 イメージ:PIXTA

また「楽ならそれに越したことはない」という考え方、これも実は、非常にクリエイティブな考え方です。

決められたやり方に沿って仕事をしているだけでは、やはりつまらないし「仕事のための仕事」みたいなことばかりが増えて効率が悪くなっていく。

これに対して「もっと楽にやりたい」という“欲”を持つことは、すなわち業務改善やイノベーションへと繋がっていくことです。

楽したら売り上げが減るのではないか、という恐怖心を持つ経営者は少なくありません。であれば、楽もして売り上げも上がり、しかも皆が楽しい、そういう「全方位が満たされる欲望」を持ち、それを実現していけばいいのです。優れたイノベーションというのはそういうところから生まれていきます。