11月から全国的に新型コロナウイルス感染者数が急増している。特に東京都の増加は著しいが、小池百合子都知事は「国が判断すべき」と、いまひとつ煮え切らない態度を取っている。その背景には、あのトランプ大統領との共通点があると舛添要一氏は指摘しています。

非科学的な論理を強引に展開する‟リーダー”

新型コロナウイルスの感染者が世界で5700万人を超え、死者も140万人に迫っています。WHO(世界保健機構)は10月6日、世界の人口77億人の約1割が感染しているとの見積もりも発表しています。

日本でも11月に入って感染者が急増し、深刻な事態となっているのは周知のとおりです。菅総理も一定の効果が評価されていた「GoToキャンペーン」の見直しを発表するなど、対応に追われています。

一方、東京はといえば、小池都知事は自身が感染防止の先陣を切る、ジャンヌ・ダルクのようなイメージを作ろうとしているだけで、やっていることのすべては人気取りです。

はっきり言ってしまうと、あの人の頭の中は自分のことしかありません。わたしは、小池都政がこのまま続けば、おおげさでなく東京は終わるという危機感を持っています。

小池都政の特徴をひとことで表せば、ポピュリズムです。ポピュリズムの時代には、大衆の支持を得るために、非科学的な論理を強引に展開するリーダーが出がちです。

先日の米大統領選で、バイデン氏に負けたトランプ氏などがその典型で、日本ではあたりまえとなっているマスク着用などの防止策を、一切講じないことを戦略として選挙を戦い、そして負けました。

日本人の目からすれば、かなり異様に見えたトランプ氏の戦略ですが、科学的な感染防止対策の実施よりも、政治パフォーマンスを優先させて、自身の人気を高めようとしている点で、実は小池都知事も同じなのです。これでは都民の生命と財産は守れません。

「仮想敵」を作るだけで中身が何もない

もともと、知事に就任してからの小池都政というのは、豊洲の中央卸売市場や、五輪競技施設の見直しなど、ワイドショーが喜びそうなことばかり。

先ほど「ジャンヌ・ダルクのようなイメージ作り」と例をあげましたが、仮想敵を作って自分が大衆のために闘っているという構図を作るのが常套手段です。「希望の党」を設立したときの「小池ブーム」は、まさにポピュリズムの典型。あきらかに異常でした。

一方、小池氏のやることには常に中身がありません。豊洲にしても五輪会場にしても、時間とお金を浪費しただけで、結局は私が都知事時代にやってきた計画に落ち着かざるをえませんでした。まるで何ごともなかったかのように豊洲へ移転している現状を見ると、呆れる以外ありません。

私の都知事時代に、競技施設などで約2000億円を節約してプールした予備費があり、その予備費を充当して「都政のコストをわたしが下げた」などと言ってみたり、あるいは、やはり私のときに決めた都庁内保育所「とちょう保育園」も、さも自分がやったことのように振る舞っています。

万事がその調子なのですが、そうした小池劇場に簡単に乗せられ、失政があきらかになっても総括して批判をしないマスコミにも、大きな責任があるのは言うまでもありません。

そこへ起きたのが、新型コロナウイルスのパンデミックでした。パフォーマンスだけで、実を伴わない空虚な小池都政を直撃したのです。

「東京アラート」という、カタカナで見栄えのいいワードを引っ張り出してきては、都庁やレインボーブリッジを赤くライトアップして悦に入っている。それを見物しに密集騒ぎが起きても、小池氏にとっては「目立つ」という目的が果たせたので満足なのでしょう。

▲小池氏にとっては「目立つ」ことが目的 イメージ:PIXTA