アイドルファンにとって「刺さりにくい」存在

細胞分裂してできたグループだけに「変幻自在」がセールスポイント。

前述したようにキャリアも長ければ、大舞台も数多く経験してきているので、正直な話、歌やダンスのスキルも高い。

こう書くと「だったら、すぐに売れそうじゃないか」と言われそうだが、ここがアイドルの難しいところ。アイドルファンというのは、応援するアイドルたちがどんどん成長していく様をリアルタイムで体感することを喜びのひとつとする傾向が強く、デビューしたばかりの若いグループに流れていきがちなのだ。

歌が下手でも、ダンスがドタバタしていても、それは「伸びしろ」。

日々の活動を通じて、ちょっとずつ成長していく姿を見ることが応援するモチベーションとなり、極端な話、ブレイクしてしまったら、それをきっかけに「他界」(アイドルファン用語でファンを辞めること)して、また新しいグループへと流れていく。

それも楽しみ方のひとつだから、否定しないが、そういう市場で勝負をしようとなったときに、そこそこスキルの高いアメフラっシはアイドルファンにとって「刺さりにくい」という皮肉なポジションに立っていた。

編集部からのオファーは「これからきそうなアイドル」だったが、アメフラっシの場合、「2020年にブレイクしなければ間に合わないアイドル」ということになる。

僕はもう9年近くに渡って、ももクロの現場に通いつめ、密着取材を続けている。

だから、妹分の彼女たちはさまざまな局面で視界に入ってきてはいたのだが、他のアイドルの取材もしているので、とてもじゃないけれど、そこまで取材対象にする余裕はなかった。

だが、いつかはしっかりと向き合うべきグループだという意識は常にあり、そんなタイミングでweb連載のオファーがあったので、じゃあ、いまこそ向き合ってみようか、という気持ちを抱き始めていた。

神田明神ホールでの4人体制初のライブで起きたこと

連載のオファーがあったのは昨年の夏ごろの話。

アメフラっシのメンバーはちょうど、ももクロの明治座公演に連日、出演している真っ最中だった(ここがひとつのブレイクポイントになる可能性もあったのだが、愛来が足を負傷し、杖をついての出演ということになってしまった)。

ももクロの取材をしていると、自動的に彼女たちの演技を毎日、目にすることになる。このまま連載の取材をしよう、と考えていたのだが(実際にイベントにも足を運んでいる)、ここで状況が一変する。

メンバーの大平ひかるが脱退を表明したのだ。

3B juniorからアメフラっシへと細胞分裂してから、もっとも変貌をとげたメンバーだっただけに、この脱退は痛手だった。

編集部から「どうしますか？」と連絡があったが、すぐには返答できなかった。

メンバーが5人から4人に減ったことで、どんな変化があるのか？

まずは4人による活動を見てみないことには答えが出せない。

2019年12月14日に大平ひかるが脱退し、その翌日の15日には神田明神ホールにて、4人体制最初のライブが開催されることが決まった。

とにかく、このライブを見た上でこれから先のことを考えよう。まったく未来が見えなかったから、web連載の話は白紙に戻さざるを得ない(ゆえにこの時点ではメンバーにも、マネジメントにも連載の話は一切していなかった)。

今だから話せるが、じつは2014年に3B juniorが本格的にレッスンをスタートさせたとき、僕はこっそりとその現場に呼び出されて「この子たちのことも見続けあげてもらえませんか？」と聞かれたことがある。そのとき、大人数でレッスンする姿を見て、とても当時の自分のキャパシティーでは処理しきれないと判断し、その場でお断りしてしまった、というちょっとした因縁がある。

それもあって、ずっと気にはかけてきたのだが、今回も連載の話が立ち消えになったら、よっぽど縁がなかった、と思うしかない。

こうやって連載がスタートしてしまっている以上、神田明神ホールでの4人体制初のライブで「なにかが起こった」ことは、もはやネタバレ状態にあるが、じゃあ、いったいなにが起こったのか？　それは歌やダンスとはまったく違う部分に心を貫かれてしまったのである。その内容とは……。

『毎週アメフラっシ！』は次回２/11(火)更新予定です、お楽しみに。