約1年半振りに開催予定だった単独ライブ『高級ジャンピングボレーライブ』について天竺鼠さんにお話を伺いました(取材は2020年末収録)。残念ながら中止となってしまいましたが、奇想天外なネタの数々が観られる単独ライブにおける、これまでの驚愕エピソードやそれぞれの活動、ふたりの関係性、今後について余すところなく語ってもらいました。
※本記事は『+act. ( プラスアクト )2021年2月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。
完成されたものには興味がない
若手時代から斜め過ぎる思考力と表現力で、孤高の存在として注目されてきた天竺鼠。近年、川原克己はアートで、瀬下豊は体を張ったロケで、それぞれとしての活躍も目立っている。そんな彼らが、約1年半ぶりに単独ライブ『高級ジャンピングボレーライブ』を開催する。〔注:公演は中止となりました〕
「自分の楽しいことをやっているだけ」と飄々と語る川原に困惑しながらも、相方の放つ発言一つひとつに爆笑してツッコんでいく瀬下。高校時代の友人から始まったふたりの関係性は今も変わらないよう。撮影中、ふたりともエアマックスを履いていることをカメラマンに指摘されると、瀬下は「恥ずかしいですわ」とはにかんだ。
――約1年半ぶりの単独ですね。昨年開催しなかったのは、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあったんですか?
川原克己(以下、川原) いや、関係ないですね。今回も怪しい時期ではあるんですけど、特に何も考えずに近々やりたいなと思ったくらいのことです。もしかしたら、(この単独も)なくなるかもしれないしねぇ?
瀬下豊(以下、瀬下) なんちゅうこと言うねん! いつも相方が決めるんで、僕は何も知らないんですよ。
川原 たぶんマネージャーから伝え聞いてるんじゃないですか?
瀬下 いや、言うてこない。もし僕が先々のスケジュールを確認せんかったら、直前まで知らない可能性もありますね。もうずーーっとこんな感じなんです。
川原 大阪から東京に出てくるときも勝手に決めたし、最近だと僕だけ(吉本興業と)エージェント契約したんですけど、それも勝手にしましたし。
瀬下 エージェント契約のことはSNSで知りました。今回の単独も、Twitterにファンの人から観に行きますっていうのがきて、あぁ、あるんやって知りましたね。
――では、川原さん。現時点で今回の単独の構想はありますか?
川原 全くないですね。いつもギリギリになっちゃうので。
瀬下 ほんまにそうで、単独の2~3日前に技術さんたちが、きっかけを確認するためにリハーサルをするんですけど、その時点でまだ決まってなくて当日でいいですか、みたいなことが多いんですよ。
川原 いつもは大阪で(単独を)やってから東京でやるんですけど、今回初めて東京が先なんで、全く仕上がってないものを観られるかもしれないですね。
瀬下 仕上がってないもん観せたらあかん! 今まで大阪の人らには、とんでもないものを観せてたってことやん(笑)。
――ある意味、今まで観られなかったものが観られるっていう、楽しみがあるということですね。
川原 二度としないネタが観られますもんねぇ?
瀬下 いや、どっちに価値付けてるねん!
川原 一番ひどいときは、単独本番のコントとコントの合間で服を着替えてる最中に、最後の漫才、どうしようかって考えたこともありました。まぁ、ギリギリになっちゃうひとつの言い訳として、完成されたものにあんまり興味がないっていうのがあるのかなと。
瀬下 何それ?
川原 かっこよく言ったほうがいいかなと思って。
瀬下 かっこつけてんのばれてるで?
川原 それこそ単独なんて、その日にしかできないことができるもので。テレビに出てる人たちって上手ですし、今時、舞台でもみんな上手にやってますけど、この芸歴で上手じゃない舞台作りっていうのもいいんじゃないかなって。17年やってきたヤツらの舞台が、とんでもなくふわっと終わるのもいいなと思うんですよ。
――(笑)。ということは、これまでの単独でお客さんがシーンとなったり、ざわついたりはざらにあったと?
瀬下 おおいにあります。ファンだけ来てるのに、すーっごい変な空気になって。
川原 10分のコントを3回連続でやったことがあるんですけど、3回目をやってるとき、僕らのことを好きで観に来てる人たちなのに、みんな気持ち悪~いっていう顔で観てました。1回目はあれだけウケたのに3回目で引いてるみんなを見て、あぁ、僕はこれがやりたかったんだなって。
瀬下 俺は二度とやりたくないよ! 3回目やってるとき、げぇ吐きそうやったんやから!
川原 まぁ、僕はお客さんに楽しんでもらいたいとは思ってないので。自分が楽しくて、あわよくば楽しめたお客さんはラッキーだねっていうくらいなんですよ。
瀬下 ちょっと......なんなん、その感覚。