お笑いファンのみならず、多くの人を魅了する漫才頂上決戦『M-1グランプリ』にて、2002年から9年連続で決勝進出を果たして、2010年に頂点に立ったお笑いコンビ・笑い飯。

Wボケ&Wツッコミという漫才スタイルと、圧倒的な発想力&展開力で、芸人への最高の褒め言葉である“面白い”を毎年塗り替えて来た二人は今、メディアに出始めた新世代の芸人達からも憧れの眼差しで見られている。今年でコンビ結成20周年と芸歴を重ねてもなお進化を止めず、漫才を探究し続けている。

※本記事は『+act. ( プラスアクト )2021年1月号』(ワニブックス:刊)より、一部を抜粋編集したものです。

単独ライブを喜んでもらえるのが嬉しい 

――年末に東京と大阪で単独ライブを毎年開催されていますが、毎年、新ネタを3本ずつおろされてますよね。

哲夫(以下、哲夫) 毎年、単独ライブでしか新ネタを作らないんです。やから、来年に向けての新ネタ作りみたいな意味合いにもなってるところがあるかもしれないですね。若手のころは2カ月に1回くらい、単独をやってまして。

西田幸治(以下、西田) いっとき全然動かないマネージャーが付いてまして。なんの用意もしてなくて、どんどん開催が遅くなって年末にやることになったんですけど。

哲夫 そこから11月、12月に毎年やるようになりました。

――若手のころ、お話を伺ったときに、ネタの題材はいろんなところにあって大喜利みたいなものだと。で、お題は簡潔であればあるほどいい、というようなことを、お二人が話されていたのが印象的だったのですが、そこから変化はありますか?

哲夫 たしかに、若手のころはそうでした。今はお弁当箱の中におかずが残ってない状態というか。法事の弁当にいろんな残り物がいっぱいあって、あらゆるものがつまめるなぁと思ってたんですけど、法事の弁当も家に持って帰ったら食べますからね。今はもうだいぶ食べてる状態ですよ。やから、魚の骨を食べてる感じがありますし、さくらんぼのタネでもしがもうかなっていう感じですね。まぁ、さくらんぼの種でさえ、結局はしがめるんですけど(笑)。

西田 若手が言って笑えるネタもあれば、おじさんが言ってるとなんや気持ち悪いなって思われるネタもあるじゃないですか。その辺はちょっと変わってきますよね。ちょっと気をつかう時代ですから、これはオッケーか、みたいなのも1回考えていかないとあかんっていうところも変わってきました。それに雑念も多くなりました。子どもが今あれやってるけど大丈夫かな、とか考えることも多くなったので、ネタに集中しにくくなったというのもあるかもしれないです。

哲夫 コロナの影響もあって家にいることが多くなったぶん、お酒の量が減って、ある程度、考えることが鮮明になったかなって思うんですけど、そのぶん、年齢でぼんやりしてまうんでチャラです(笑)。

西田 歯が割れて喋りにくくなったりもして。寝てるときに噛み締め過ぎてるらしくて、ガサガサッとする割れたところに舌が当たって痛いなぁと思ったりして。歳を取るとこういうこともあるんやと思うと、師匠方は凄いなと思ってしまいますね。

――吉本には、舞台に立たれている現役の先輩方がたくさんいらっしゃいますもんね。そういった体の変化を感じながらも、単独ライブを続けているのはなぜですか? 芸歴を重ねると、主催ライブをやらなくなる人も多いですけど。

哲夫 お客さんが来てくれはるっていうのが、一番デカいです。来てくれはれへんようになったらやめようと思うてますけど、来てくれはる限りは僕らも観て頂きたいので。

西田 それもそうですし、漫才番組の収録に呼んでもらえるとなると、やっぱり新ネタを作っていかないと、という気持ちもあります。

哲夫 まぁ、誇らしいですよ。ずっと単独ライブを続けられているっていうのは。あいつとあいつとあいつ、後輩やのにもう単独ライブをやってないし、新ネタも作ってないってなったとき、ちょっと考えることがあるというか。全てにおいてだいぶ上やんけ、みたいなことを思える瞬間は悪~い快感があります(笑)。

西田 しんどいんでできるだけやりたくないんですけど、ただやると喜んでもらえるのが嬉しくて……。本音を言えばですけど、矢野・兵動の矢野さんみたいに、歌って踊るライブとか羨ましいです(笑)。それが許される人と許されない人がいるので、しゃあないなぁと思いながらやってます。

お客さんのドカンドカンと響く笑い声が懐かしい

――(笑)。たしかに、笑い飯さんの新ネタは、多くの方が楽しみにしてらっしゃいますからね。今年の単独はどうなりそうですか? 本誌(+act.)が出るころにはNGKでのライブは終わってまして、ルミネの単独が控えている状態ですが。

西田 今年は縮小版です。コロナの影響で長い時間できなくて。

哲夫 だいたい1時間くらいで、新ネタ3本やってコーナーを縮小する予定です。いつもは2時間と言いつつ3時間くらい……。4時間近くやったこともあったので、今年もどうなるかわからないんですけど、極力、感染拡大予防のために早く終わろうと思ってます。

西田 いろんな決まりごとがあるので、少しでも延びるといろんなところに迷惑がかかってしまいますからね。ただ、延ばすようなゲストが出るときは困りますよね……ベテランの方とか、ボールが回って来たらなかなかドリブルをやめないような人もいるので(笑)。大昔なんですけど、島木譲二さんに出てもらったときなんか、全然帰ってくれなかったんですよ。

哲夫 一人ひとりに、パチパチパンチを見せつけてました(笑)。

――劇場でいえば、今年は新型コロナウイルスの影響が色濃く出た1年で、吉本の常設劇場も一時休館になりましたよね。

西田 いっとき無観客でリモート配信をしていた時期があったんですけど、あのときを考えると、多少でもお客さんがいるといないでは全く違うもんやなと。休館が明けて、お客さんをちょっとだけ入れるってなったとき、ほんまにお客さんの前で(漫才を)やるのは楽しいなと思いましたね。無観客のときは誰に向けてやってるのか、あんまりわからへんかったので……。舞台袖にいる芸人を笑かしたりしてましたけど、何回かやってこれは違うなと思ったりもして。

哲夫 NGKなんで(会場が大きいぶん)シーンとしてましたから。袖にいる社員さんがわざと大きめに笑ってくれて、(芸人がネタをやりやすいように)笑い屋をしてくれてんねんなぁ、ありがたいなぁと思ってました。今は徐々にお客さんが増えて、だんだん戻って来ている感じはありますけど、満パンでドカンドカンと響く笑い声が懐かしいです。ほんまにNGKは、いつもありがたい笑い声があったので。


笑い飯さんへのインタビュー記事は、12月11日発売の『+act. (プラスアクト) 2021年1月号』に全文掲載されています。