過去の成功体験を正確に思い出そう
あなたが「キックを外して負けたくない」とネガティブなシナリオを描くタイプであれば、どうすればいいのであろうか。こうしたタイプの違いは先天的な要素もある。では生まれつきプレッシャーに弱い性格の人は、一生プレッシャーに悩まされなくてはいけないのであろうか。
私の答えはNOだ。
生まれつきプレッシャーに弱いタイプだったとしても、適切なアプローチにより、こうした精神的な問題に対応することは十分に可能だ。
一つは、過去の成功体験を思い出してみること。たとえば練習で蹴った完璧なキックを思い出してみる。足の運び方、ボールに足を当てた感触、ボールの真ん中を射抜いたあとのボールの軌道を頭に思い浮かべるのだ。
あるいは、以前の試合で似たような勝負を分ける場面に立たされ、ゴールを決めた経験があればそれでもいい。
成功する場面をイメージするということは、失敗への畏怖を頭から排除するのに有効な手段の一つ。イメージは、正確で鮮明で詳細であればあるほどいい。これからやろうとしていることの成功をイメージするために、過去に実際に成功した場面を、できるだけ正確に思い出す。
よくないのは失敗の場面を「考えないことにしよう」と必死に頭の中から排除すること。これは絶対にうまくいかない。何かを頭の中から消そうとすればするほど、それは頭の中に強く色濃く残ってしまうものだ。
発想の転換である。失敗のシナリオを「考えない」のではなく、成功のシナリオをより詳細に「考える」ことにより、失敗のシナリオを考えるスキを頭の中から消し去るのだ。
プレッシャーは自分の中から作り出せ
一般的にプレッシャーとは外側からもたされるものだ。
ビジネスマンでいえば上司からの評価や期待、ラグビーでいえばグラウンドで相手チームから受ける激しいプレー。ご存じの通り「プレッシャー」は英語で、日本語で言えば「圧力」だ。圧力は何かを押しつぶすこともできるが、使い方によっては、さまざまな効果を生み出すこともできる。
プレッシャーを自分の中から作り出し、それを有効活用できれば、それは人生を切り拓く大きな力になる。なぜなら、成功へのエネルギーを誰にも頼らずに、自分で生み出しているからだ。
自分自身が持っている成功願望に耳をすませる。
同期の中でナンバーワンになる、スポーツの代表選手になる、人それぞれに置かれた立場や状況によって違えど、なんとしても達成したいものがあるはずだ。自分はこれを成し遂げるために生まれてきたのだ、という強い意志は自分自身を前に突き動かすポジティブなプレッシャーになる。
私は幸運なことにラグビーに出会った。このスポーツで勝ちたい。とにかく勝ちたい。どんなに厳しいハードワークを課してでも、勝ちたい。自分の内側からあふれんばかりにわいてくる「勝ち」への願望が、私の人生を突き動かしていた。
私のように人生を賭けてまで、夢中になれることが見つからないという人もいるかもしれない。もしくは今やっているものが、本当に自分のしたいことなのかと悩む人もいるだろう。
答えは自分の中にしかない。違ったと思えば方向転換すればいいし、回り道をしてもいい。まず、とことん自分と向き合うことだ。自分は何をすべきなのか。
自分の中からわいてくるプレッシャーに今一度、耳をすませてほしい、その声に従えばおのずと道は拓ける。私ができたのだから、あなたもできるはずだ。