人間関係・仕事・時間・お金・健康……人は何かしらの望みを持っています。しかし、大多数の人は、それを達成することができません。なぜなら、成果が出せない人ほど、複雑で難しいことをやっているからなのです。そして、成果を出している人は、シンプルで効率的なことをしています。歯科医師として世界のトップレベルの人々と多く接してきた井上裕之氏が、本当に成功している人たちから学んだ、誰にでもできる「シンプルな成功法則」を語ってくれました。

※本記事は、井上裕之:著『効率がすべて -誰でもできるけど4%の人しかやっていない報われる行動-』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

高い目標を自分自身で決めれば「ゾーン」に入れる

「緻密な行動を、集中状態でやる」。これこそが「自分の望みを“確実に”“短期間で”かなえる」絶対ルールです。自己実現していく人は「緻密な行動を、集中状態でやる」ための仕組みを、意識的にも無意識的にも自分の中に持っています。

そのカギとなるのが「自分を評価するときの基準値の設定」です。

自分自身を評価するときの基準の高低によって、物事を成し遂げられるスピードも、得られる結果の大きさも変わってしまうからです。やってのける人は「これが達成できれば満足だ」というときの「これ」のレベルが、例外なく高いと言えます。

古代ギリシャの哲学者プラトンは、こう語っています。

「最高の勝利は、自分を乗り越えることである」

私たちは、学生時代には教師から、社会人になったら上司や経営者から、実現可能な目標をつくり、それを達成していくことの大切さを教えられます。しかし、これでは逆に、行動の質とスピードを落としてしまい、非効率です。

また、現状の範囲内で達成可能なことをしていては、いつもと同じような結果しか得られませんし、自分が本当に欲しいものは得られません。

達成可能な目標を設定すると、それを達成するために生まれるエネルギーも小さなものとなってしまいます。いつもと同じようなことをやればいいので、集中力などをはじめとしたさまざまな能力も、いつものレベルでしか発揮されないのです。

目標を決めるときには「できることは何か」ではなく「得たいことは何か」ということが、スタートでなければなりません。やってのける人というのは、達成が難しそうな目標をあえて設定し、自分自身を評価するときのレベルを引き上げます。

高い目標を設定し、それに向けて突き進むことは、一見、現実的ではなく、非効率だと感じる人もいるかもしれません。しかし実際には、これほど目標の達成をスムーズにできることはないのです。

高い目標に向かうときにだけ、計画は緻密になり、集中力を極限まで高めることができるからです。行動の質とスピードが高まり、ミスをすることもなくなります。

▲高い目標を自分自身で決めれば「ゾーン」に入れる イメージ:PIXTA

極限の集中状態であるゾーンに入るためには、自分への評価基準を高く設定することが一番です。

たとえば、一流野球選手は「ボールが止まって見えた」と、よくインタビューなどで語りますが、この状態になることをゾーンに入ると言います。このとき、感覚も能力も最高度に高められ、行動の質とスピードは飛躍的に上がります。

私は、仕事で多くの手術を行ないますが、このときにこそ、難しい目標に向かい、自分の評価基準を高めることの重要性を実感します。

「これは難しい」と思う手術に向かうときほど、高い集中力で、最高の行動ができて、患者さんに満足してもらえるからです。難しい手術ほど、緻密に計画を立て、何が起こっても対応できる策を用意せざるを得ませんし、無理やムダな行動がない、最短でゴールに達する道筋が明確になります。

また、実際に手術に向き合うときにも、イメージしたプロセスを正確に一つひとつ確実に行なわなければならないので、目の前の一点に魂が込められ、集中力が高まり、質もスピードも高いレベルで行動することができるのです。

「このレベルの結果が出せたときに、自分を評価してあげる」ということの基準を高めることこそ、目標達成への最大の効率化だと言えるのです。目標は他人に話す必要はありませんので、自分を小さな枠に閉じ込めず、もっと自由に設定していいのです。