Jリーグ愛にあふれる活動から、選手やクラブのみならず、サポーターからも愛されているJリーグウォッチャー・平畠啓史が、Jリーグにまつわるあらゆる言葉を解説した新著『平畠啓史の日本一わかりやすい Jリーグ語辞典』が発売された。
いまや“死語”となりつつある昭和のサッカー用語から現代サッカー用語、サポーターから広まった用語など750ワードがイラストを交えてわかりやすく説明されている1冊。
J1・横浜FCでプレーする中村俊輔選手との対談も巻末に掲載されているのだが、ここでは惜しくも書籍には載せきれなかった未公開の対談をお届け! これまで中村選手が指導を受けてきた監督についてや、今季の意気込みなどを聞いた。
岡田武史さんは“持ってる”監督だった
平畠 中村選手は海外でのプレーも長く、さまざまな監督の下でプレーしてきました。そのなかで、日本人監督の印象はいかがですか?
中村 2010年にJリーグに復帰するまでは、クラブチームの監督は全員外国人だったので、代表活動のときにお世話になった岡田さんの印象が強いです。岡田さんは優秀というか“持ってる”監督で、組織の作り方が面白い。
平畠 岡田さんは今、FC今治の代表取締役となって街づくりにも貢献されていますが、すごく面白いですよね。
中村 知識が豊富ですよね。監督と選手も結局、人間と人間の関係性じゃないですか。孔子がこう言っていたとか、1000人の兵士が1万人の敵にこう勝った、とかの話をしながら「じゃあ、日本がブラジルに勝つにはどうしたらいいと思う? 日本人の良さである規律や敏捷性だけで勝てると思う?」って思考を広げるような話し方をしてくれるんです。とにかく話が面白かった。ボード上で戦術の話ばかりしていると、思考が浅くなってしまうところがあるというか。
平畠 決まりごとばかりに目を向けるのは、プロっぽくはないですよね。
中村 自分の武器を見せることより、組織的にキーパーからつないで決まった位置に決まったように入っていく。戦術にばかり耳を傾けていると、言われていることをやっているだけになってしまって、面白い選手は減りますよね。
僕はその逆で、自分のアイデアを評価されて日本代表に入って、代表でもまた違うアイデアを出しながらプレーするようにしていた。今はそういうことを求められなくなってきているのかなとも思います。
平畠 ただ、実際の試合は想定した通りにならない。ピッチ上だからこそ出てくるアイデアは必要ですよね。
中村 そう思います。組織で試合を作るという現代サッカーと、選手個々のアイデア両方がうまく混ざり合っているチームは、川崎フロンターレですよね。(監督の)鬼木さんに聞くと、選手たちに細かい指示はほとんど言ってないらしいんです。チームとしての約束事を作り、あとは選手たちがピッチ上で判断できているんでしょうね。そういう川崎が昨シーズン、優勝してよかったなと思いました。