東証一部上場企業のなかでも異彩を放つオンリーワン企業・株式会社バリューHR。創業社長の藤田美智雄氏は、サラリーマンから41歳で独立し「健康管理のプラットフォーム」を掲げて、企業・健康保険組合・健診機関・個人を対象とした支援サービスを提供してきた。会社設立から、どのように発展してきたのかを聞いてみました。
保養所限定だった宿泊補助を激安海外旅行にも
新保 サラリーマンから独立して株式会社バリューHRを設立した藤田社長ですが、その後、ここまで会社が大きくなったターニングポイントは、どのあたりにあったのでしょうか?
藤田 大きなポイントは、健保組合が提供するサービスを大きく転換したことにあったと思います。
新保 健保組合のサービスというと、保養所とかですか?
藤田 そうですね。当時の健保組合は、非常に陳腐で画一的なサービスだったんです。保養所をつくって利用してもらう、風邪薬や歯ミガキセットをパックにして配る、『けんぽだより』という冊子をとじるバインダーを配る……。いらないんですけれども(笑)。
新保 私がニッポン放送に入社したとき、もうすでに保養所があまり利用されていなかったのを思い出しました。かなり前の話になりますが(笑)。
藤田 保養所なら「宿泊の補助」として「1泊いくら」と決まっている。ただ調べてみると、それは別に保養所でなくてもよかったのです。例えば、既存のパック旅行でも補助できる。さらに調べると、海外旅行でも宿泊費を補助できたんです。
当時は「韓国2泊3日で29,800円!」などあって、1泊8,000円の補助があれば、2泊で1万6,000円の補助ですから、自己負担は1万3,800円。そのほうが保養所利用するよりも、ずっといいと考える人も多いでしょう。
目的がリフレッシュなら、旅行に限らず、マッサージやエステでもいいし、野球観戦でもいい。すでに福利厚生として、そういうことをやっている企業もあったのですが、基本的に企業がやると「現物給与」と見なされて課税対象になってしまう。でも、健保組合の事業であれば課税の対象にならないんです。
新保 企業にとっても個人にとってもメリットがあります。
藤田 そうなんです。ただ、福利厚生サービスを充実させようとすると、健保組合事務局の仕事が煩雑になってしまうんですね。そこで、そのあたりをシステム化しよう、と。自社で「バリューカフェテリアシステム」というのをつくり上げ、既存の健保組合にも利用してもらえるようにしました。
多様性のある福利厚生事業を提供し、しかも健康保険組合の事務局は省力化できる。利用者は低コストで、役に立つサービスを受けられる。みんなにメリットがあるシステムだったので、多くの健保組合で利用されるようになりました。
健康診断が企業の義務となり利用が急拡大
新保 現在、株式会社バリューHRの収益は、健保組合よりも企業のほうが大きくなったということですが、これはどういうことだったのですか?
藤田 国が、企業に対して「従業員の健康診断や健康管理を、きちんとやらなきゃいけない」という法律や制度を、どんどん定めていったことが大きいです。これは企業にとっても健保組合にとっても大変な負担になるのですが、私たちの「バリューカフェテリアシステム」をさらに拡充させて、それを利用してもらえば解決できました。
具体的には、健康診断の予約や受診をサポートし、健診の結果をデータとして保管・管理することができたわけです。これにより、健保組合だけでなく、企業からのニーズも急拡大しました。
新保 企業にとっても個人にとってもいいことばかりです。健康診断の予約調整の代行業務も、企業や個人にメリットがありますよね。
藤田 はい。それに健保組合の事務局や提携先医療機関にとってもメリットがあります。(以前は)私も企業の人事にいましたから、営業職など急な予定変更が多くて、健診のキャンセルが多発するのはよく知っています。そういうのを外部に委託できたら、みんなが楽になれるんですよ。
私たちの健診予約システムなら、提携先医療機関から予約枠を預かっていますので、社員一人ひとりが医療機関に電話することなく、ホテルや美容院の予約のように、インターネットだけで予約を完結できる。企業側は予約状況を把握できるので、予約してない人に督促するのも簡単です。
コールセンターが、企業の人事担当に代わって対応するので、予約の日程変更やキャンセルにも対応できます。
新保 時代とともにニーズも変わっているのでしょうが、しっかりつかんでいますね。
藤田 まあ、高齢化で医療費負担も増えてきていて、健保財政は圧迫されているのですが、そういうアゲインストの風があっても、それ以上に健康管理へのニーズは高まっていくと思っています。