アメフラっシにとって、Zepp Hanedaという大舞台での単独ライブとなった『Wings and Winds』。今週は、夜の部の『Winds』で生み出された、あの「一体感」の源とはなんだったのか――その根底により深く迫っていく。数年後には伝説になっているであろう「3.21」という奇跡の1日を、皆さんと共有していきたい。

「会場に行って楽しむこと」こそがアメフラっシのライブ

▲ライブ配信も魅力だが、やはりこの「一体感」は何事にも替えがたい興奮がある!

「飛んで!」

いきなり鈴木萌花に、そう言われた観客はきょとんとした。えっ、いま、この曲で?

それは、第2部で『メタモルフォーズ』を披露したときのことだった。この楽曲はファンのあいだでも「じっくり聴く」というカテゴリーに入っているようで、曲の序盤でもペンライトを顔の前で小さく振る印象。そして、間奏ではクラップで盛りあげる、というのが定番となっていた。

そのタイミングで鈴木萌花が「飛んで!」と叫んだ。さすがに、これは戸惑ってしまう案件。そんな空気を察して、市川優月がさらに煽る。

「もっと飛べ!」
「もっと、もっと!」

その声に合わせて、ジャンプする観客。この瞬間『メタモルフォーズ』という曲が、まったく違うイメージに化けた。おそらく、次のライブでこの曲のイントロが流れたら、ファンはもう飛びたくて仕方がなくなるはずだ。家で音源を聴くときはじっくりと、ライブで楽しくジャンプする……アメフラっシの可能性がまたひとつ、大きく広がった。

第1部の反省点を踏まえて、第2部ではパフォーマンスを「崩す」という決断をした4人。もっとも顕著な例が、この「もっと飛べ!」だった。

とはいえ、これは当日、急に決まった話というわけではない。メンバーやスタッフを取材していくなかで「ライブ感」という言葉が何度も出てきた。さらにスタッフと突っこんだ話をしていくと、今回のライブの「裏テーマ」というべきものが浮かびあがってきた。

「こういう時代になって、配信でライブを楽しむことが定着しました。それは大事なことですけど『じゃあ、別に会場に行かなくても配信で見ればいいや』となってしまうのは、ちょっと違うと思うんですよね。

あくまでも会場に行って楽しむことがライブ、という文化を途絶えさせてはいけないと考えています。アメフラっシにとっては、まさに今回がその第一歩。やっぱりライブは楽しい、と体感してもらうことはとても大事ですよね」

▲パフォーマンスを「崩す」という決断を市川優月も見事に体現していた