“いなし”の使い手・安住&忘却の天才・石井

テレビ局のキャスターとして活躍しながら、決してその“枠”にとらわれない司会者として、古舘は往年のキャスターである、みのもんた・関口宏・小倉智昭などにつづき、安住紳一郎と石井亮次らを紹介。それぞれの司会の“魅力”について、詳細に語っている。

「安住紳一郎君は、自己プロデュースの神様ですよね。(中略)発声、立居振る舞い、鼻濁音や母音の無音化。『こんばんはー』ではなく『こんばんは』。こうしたアナウンサー教育はいくらでもできます。

しかし、“いなし”だったり、毒をちょっと出す“加減”とか、センスの部分は誰も教えられません。(中略)MCとは、マスター・オブ・セレモニー、全体を指揮する人を指しますが、安住君は『プロデューサー・アンド・MC』。これがMCの真骨頂なのかもしれませんね」

精神年齢も自己プロデュース力も「彼の方が上」だとし、安住氏には「兄さん」と慕われながらも「オジキ」と呼ぶというエピソードも明かしつつ、あのビートたけしをも包み込む“テクニック”について絶賛!

そして、古舘が初めて「レギュラーコメンテーター」として出演中の情報番組『ゴゴスマ~GOGO!Smile!~』で、メイン司会を務める石井亮次については、自身が提言したというアドバイスのエピソードをもとに、こう語る。

「『そうですよね。その方がいいですよね』と言ってくれるんですが、本番では全然やってくれないんですよ。でもそこがいい。(中略)粒立てず、あえてフラットにいく。それが石井流です。

今はネットのYahoo!ニュースで、上野公園で桜が咲いたトピックスも、殺人事件も同列に並ぶ時代。Yahoo!ニュースなら、どんなニュースも13.5文字。そんな時代になにがメリハリだ。今はフラットの方がいいとも言えます。彼が変えない姿勢を見せてくれることで、こっちが勉強させられることもあるんですよね」

▲若いテレビ局のキャスターからも学ぶことは多い イメージ:PIXTA

古舘氏は「司会者とは『なんだ、コイツの司会。癪に障るな』『あの人の言いっぷりを見ていると、つい、モノ申したくなる』……そう思わせてなんぼ。視聴者を巻き込むカンフル剤としての役割『巻き込む力』こそが、司会=MCの“真髄”である」と話す。

ならば、昭和から令和に至る現在まで、変わらずテレビ業界の中心に位置し「転石苔を生ぜず」を体現する古舘こそ、もっとも「MC」としてふさわしい逸材なのではないだろうか――? 名アナウンサーとして、数々の華々しい経歴を持ちながら、新世代のキャスターについても謙虚な姿勢で向き合い、学び、変化し続ける、古舘伊知郎の“これから”にも注目だ。