絵を描く面白さを知ったのは30年ぐらい前かな。そう語るのは、今年88歳の米寿を迎えたザ・ドリフターズの高木ブーさん。絵でドリフターズを残していくのは、自分の役割かもしれない。そう思ってからサインペンを持つ手にいっそう力が入るようになった、ブーさんにドリフの思い出や、これからのことを語ってもらいました。

※本記事は、高木ブー:著『高木ブー画集 - ドリフターズとともに -』(ワニ・プラス刊)より一部を抜粋編集したものです。 

狙いを込めたト書きも読んでほしい

絵を描くときは、まずメンバーをどのへんに描くかを考えます。たとえば、雷様と鬼が一緒にお花見をしている絵の場合は、真ん中に長さんがいて、その左に仲本、右上で僕と鬼が腕を組んで踊ってる。加藤と志村はこのへんかなと思いながら描いて、ほかの鬼はそのあとに描くんだ。スペースの都合に合わせて、何人いてもいいからね。

鉛筆で下書きしながら、どんなポーズがいいかな、仲本は酔っ払った感じにしようなんて考える。描いていくうちに、ところどころ音符を散らせば、音楽が聞こえてくる感じになりそうだなんて思いついて、細かいネタを足していくんだよね。

▲仲良くなれてよかったネ 出典:高木ブー画集

メンバーで競馬をしていて、僕の馬だけ歌舞伎みたいに中に人間が入ってて、ヨタヨタしてる絵がある。これの場合は、自分の馬を歌舞伎の馬にしようと思いついて、5人と5匹を順番に描き始める。加藤の馬をシマウマにしようなんてのは、描きながら「よし、シマウマにしちゃえ」と思ってそうしただけで、最初から決めてたわけじゃない。

「こういうネタはどこから出てくるんですか?」と聞かれることもあるけど、自分でもよくわからない。なんとなくひらめいて、なんとなく描き始める。長いあいだコントをやってきたから、頭の中にそういう回路ができてるのかな。よくわかんないけど。

絵の上に「お前は何だい」「へえ、馬が病気でして」と、ト書きが入ってるでしょ。ほかの絵もだけど、絵といっしょにト書きも読んでほしいんだよね。そうしないと、意味がわからないし、ここを見てほしいなっていう狙いが伝わらないから。

▲ロバやシマウマ、歌舞伎の馬まで参戦中 出典:高木ブー画集

この競馬の絵では、志村の髪の毛は後ろで縛ってある。たぶん、描き始めた初期の頃の絵だね。描いた日付とか色紙の裏にメモしておけばよかったんだけど、根がズボラだから、そういうことをしてなかった。でも、メンバーの頭を見ると、だいたいわかるんだよね。とくに志村の頭。最初は後ろで縛っていて、その次はヘンなおじさんになって、だんだんバカ殿になっていく。

長さんの頭も、だんだん髪の毛の量が減っていくから、描いた時期がわかる。まだいっぱいあるから、これは初期の絵だなとか。それと長さんの場合は、頭に天使のワッカが付いている絵と付いていない絵があるよね。2004(平成16)年に亡くなったんだけど、その前に描いた絵にも、あとからワッカを描き加えたりしてる。ワッカがあるから2004年以降とは限らないんだよね。

ワッカを描き加えるときは、チラッとだけ「ああ、長さん死んじゃったんだよな」と思うけど、しんみり感傷に浸っている場合じゃない。絵に集中しないと、いいワッカにならなくて失敗しちゃうからね。

本を作ることになって、背景とかを描き加えた絵もけっこうある。「ジャンケン決闘」のとか。

▲「ジャンケン決闘」負けたら罰ゲームはいっぱい揃えてるよー 出典:高木ブー画集

知らない人も多いかもしれないけど、ジャンケンするときにみんなが使っている「最初はグー」って掛け声は、志村がルーツなんだよね。絵を見た人が「そうそう、志村けんがテレビでやってて、そのあと学校で流行ったっけ」なんて思い出してくれたら、とっても嬉しい。