これまでの常識や備えが通用しなくなっている
「ゲリラ豪雨」は気象用語ではありません。都市開発によって上昇気流が発生し、積乱雲を作るという特殊な地域性を持ったものを指します。2000年代前半からメディアが多用するようになりました。
急激な気温上昇による積乱雲の発生により起きるものであり、発生場所の予測が難しく、短時間で解消する場合も多いため、この名称が使われています。地理的に発生しやすい場所もあり、寒気と暖気がぶつかるような状況で発生するケースもあります。
ゲリラ豪雨予測のキーワードとして、気象予報士が「大気の状態が不安定」と言ったときは発生しやすい状況であると思って間違いありません。場合によっては強風・落雷・竜巻・雹(ひょう)などが発生する場合もあります。しかし短時間で解消するため、大きな被害に至ることはまずありません。
近年では、日本上空で停滞前線が集中豪雨を発生させ、猛烈な大雨が長時間続くケースも続出しています。これを起こす「線状降水帯」は、連続して発生した積乱雲が線状に並んだ集合体が、幅20〜50キロメートル、長さ50〜200キロメートルにもなるもので、2015年の鬼怒川の決壊、2018年の西日本豪雨など甚大な被害を発生させました。
これまで、台風が来るのは9~10月ぐらいが中心という常識がありましたが、突然、12月ぐらいに、いわゆる「爆弾低気圧」と呼ばれる、太平洋側から来る低気圧も発生するようになりました。
さらに台風の進路が変わっています。20年くらい前までは、東北や北海道に台風はほとんど来ませんでした。また「北海道には梅雨がない」と言われていましたが、今ではそれも昔話になってしまいました。また関東を直撃するような台風は、これまでほぼなかったのですが、2019年は二度の台風直撃により、千葉県を中心に大きな被害が発生したのは記憶に新しいところです。
いまや北海道でも水害は発生しますし、冬に起こることもあるのです。事実、北海道は、2016年に連続して襲来した台風によって、ひどい水害に見舞われ、鉄道や道路などの交通網はズタズタとなり、河川の堤防決壊で多くの家屋が浸水しました。また、ジャガイモ畑などの農地や牧場にも大きな被害が及んだのです。
また、東北地方はこれまで台風が来ることはなかったので、内陸部の治水事業が遅れていたことが災いし、毎年大きな被害が発生するようになってしまいました。津波対策用の堤防を造るだけではなく、河川からの水にも注意を払わなければならなくなってしまったのです。
北海道や東北など、水害の経験値が低い地方が、より激しい気象災害を受けているのが現状です。関東への大型台風襲来で家屋や各種施設が破壊されてしまったのも、これまでの台風は本州に接近する頃には勢力が衰えていたので、被害の経験がほとんどなかったことが大きく影響しています。
これらは日本列島周辺の海水温が上昇傾向にあることが原因とされていますので、今後も被害は増える傾向にあると考えるべきでしょう。