浸水被害は地方のみに限ったことではありません。2019年の台風では、東京都多摩川の周辺では街中がドロドロの状態になってしまい、武蔵小杉のタワーマンションが機能不全に陥ってしまったことが大きなニュースとなりました。自分が住んでいる地域で水害が起きたときに、どのような事態が起きる事が想定されるのか。それには「ハザードマップで確認することが大事」だと、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は話します。
※本記事は、和田隆昌:著『【最新版】中高年のための「読む防災」 -一度読んでおけば一生安心!-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
水害には断水・悪臭・停電などの二次災害がある
水害の現場は、土砂と悪臭があふれ、直後であれば水が溜まっている状態になります。斜面がある地域では、鉄砲水が流れ家屋が全部倒壊してしまい、まるで津波を思わせます。土砂災害のことを昔から「山津波」と呼びますが、まさにそのものだと思います。
水害の発生したあとの被災地の復旧には大変な困難が伴います。家に入った泥を流せば終了という単純な話ではありません。下水と混ざった土砂は異臭を放ちます。畳などをすべて剥がし、消毒しなければなりません。浸水が深ければ、建て替えをしたほうが安く上がるという結果にもなります。地域から水が抜けるには、数日かかります。さらに、土砂はすぐにコンクリートのように固まり、人力での撤去が難しくなります。
洪水になると、ほぼ確実に断水が発生します。下水道が詰まってしまうと、上水道も止まってしまうのです。さらに電気が止まっても、水圧を上げるためのポンプが使えなくなるので、水道が止まってしまいます。
生活インフラは単独では成立しないので、すべての連携ができないと回復は望めません。水がなければ土砂を流すこともできませんし、結果、家は放ったらかしになってしまいます。
2019年の台風による浸水被害で、多摩川の周辺地域は、街中がドロドロのひどい状態になってしまいました。マンション上層階は泥に浸かっていないだけ“まし”でしたが、電気施設が被害に遭ったマンションは長期間の停電や断水に見舞われ、生活が維持できなくなってしまいました。
また山間部でも豪雨の発生時、山から来ている水で生活している地域では、自分の住むところに直接の水害がなくても、土砂災害の発生で上流域の取水地がやられてしまうと、水道がストップしてしまいます。
さらに、大規模な土砂災害が発生すると、地盤自体が崩れてしまうことや、安全確保のために行う工事の必要性から、同じ場所に住み続けることができなくなり、先祖代々の地から転居しなければならないケースも出てきます。その結果、村自体が消滅してしまうという事態が、地方では実際に起きているのです。