当たり前ですが、自然災害は日本全国、どの時期でも起こり得ることです。では、我々はいつ起こるかわからないことに対して、どのように備えればいいのでしょうか。9月1日は「防災の日」。そこで、まずこれを第一に知っておかなければいけないという「防災の基本」について、災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏に教えてもらいました。

※本記事は、和田隆昌:著『【最新版】中高年のための「読む防災」 -一度読んでおけば一生安心!-』(ワニ・プラス:刊)より一部を抜粋編集したものです。

自分が住んでいる場所の安全性の確認する

災害に備える基本は、自然災害が起きたときに自分が被害に遭わないようにすること。その基本の「き」は、安全な地域の安全な家に住むことです。

住んでいる地域の災害発生時に必要な情報や、いざというときの行動基準のための情報収集をして、安全な避難場所や避難所へ速やかに避難できる経路や行動開始のタイミングを、家族全員と共有できるようにしておきましょう。

ハザードマップを見ておけば、この地域ではどういうリスクが存在しているのか、またリスクの高い場所や低い場所を判断することが可能になります。

水害でも地震でも避難時に持っていくものや必要なものは、それほど変わりませんが、避難時の服装や装備は変えたほうがいいでしょう。

水害が起き、河川近くの危ないところから避難しなければならない場合は、ライフジャケットを用意したいところです。洪水発生の危険がある河川の近くに住んでいて、小さなお子さんや避難の遅れがちな高齢者などが同居しているのであれば、家族分を用意しておきましょう。

洪水の際には、水が入ると動けなくなる長靴ではなく、紐できつく縛ることで脱げにくくなる厚い底の運動靴がお勧めです。

地震に備えてヘルメットも用意しましょう。とくに小さいお子さんは落下物を避けることができないので、ぜひ着用させてください。自転車用のヘルメットでも十分役に立ちます。

 ポイント・・・安全な家、地域に住み、安全な場所に避難するのが基本

備蓄と避難時の持ち出しは分けて考えよう

いわゆる備蓄と、避難時の非常用持ち出し袋を勘違いしている人が多いようです。非常用持ち出し袋というのは、家から持ち出して避難所に行くためのものでなければなりません。それを勘違いして、2リットル入りの水のペットボトルや食料を、非常用持ち出し袋にいっぱい詰めている人がよく見受けられます。

基本的に避難所には避難者の命をつなぐための水や食料が用意されていると考えていいので、非常用持ち出し袋に入れておくのは、本当に最低限のもので十分です。水は500ミリのペットボトル2本程度、食料は非常食程度で問題ありません。

▲備蓄と避難時の持ち出しは分けて考えよう イメージ:PIXTA

自宅で避難生活を送るために備蓄する水や食料は、好きなだけ用意してもかまいませんが、避難所に持ち込むのは生活用品や衛生用品、半日から1日しのげる程度の水と食料でOKです。重い荷物を抱えて避難所へ向かう途中で遅れてしまったり、二次的な災害に遭わないとも限りません。

非常用持ち出し袋は、背負って走れる程度の重さ(約10キロ以下)にしておきましょう。玄関付近の目につく場所に置いておき、すぐに持ち出せるようにしておいてください。

一番必要なのは衛生用品です。災害時は感染症で亡くなる方がとても多く、2016年の熊本地震でも避難所で亡くなる方が大勢いました。避難当日から、感染症のために救急車が出動するような状況でした。

衛生用品としてまず必要なのは、マスクと消毒用アルコールの含まれたウエットティッシュです。避難所で過ごす際、感染症防止のため手足を清潔にするために使います。

▲意外と忘れがちなのが歯ブラシ イメージ:PIXTA

意外と忘れがちなのが歯ブラシです。旅行セットの歯ブラシがあれば十分でしょう。避難所生活が始まると歯磨きが億劫になります。しかし歯磨きを怠ると誤嚥性肺炎が起きやすくなるのです。特に高齢者は注意が必要です。肺炎は死に直結する病気だからです。

高齢者は、風邪からそのまま肺炎になるケースが多いのですが、口の中に溜まった細菌が肺にまわることで一気に肺炎になり、免疫不全を起こす場合もあります。免疫力が落ちることは何より怖いことです。

ですから私は「避難所を利用するのは大変リスクが高い」ということを、セミナーなどでも常にお伝えしています。

今の日本を取り巻く自然環境は、50年前、30年前、10年前とまったく状況が違います。災害によるリスクが年々高まっているのは間違いありません。さらにいくつもの災害が同時多発的に起こる「複合災害」への備えも必要になってきています。

わが国がこういった状況に置かれていることを理解し、全国民それぞれが、いざというときのための準備をしておくべきです。