デザインの着想は「惑星の軌道」だった!

このプロジェクトの期限であった「1983年までに」は、すぐそこに迫っていました。二代目社長・健次郎さんは、子ども時代から大好きな天体観測を趣味としていました。初代社長である父の利八さんは「健次郎、星は何億年も光を失わずに輝いている。それに比べれば、人間の一生は短いもんや。星を見ていると人の気持ちが大きくなるで」といって、双眼鏡を買ってくれたといいます。

日々、宇宙を見つめていた健次郎さん。ある日、次のようなひらめきを得ます。

「宇宙には無限の広がりがあって、エネルギーを蓄えて発している。惑星は、自らのエネルギーで無限に軌道をまわっている。スポーツも、そんなふうにどんどん広く普及していってほしい。ミズノも力を蓄えて、発揮していけるように」

――惑星の軌道! このキーワードがチームにインスピレーションを与え、この「新たなるミズノのシューズのラインを考える」というプロジェクトのコンセプトが固まっていきます。

それが今日、街を歩けばすぐに見つけることができる、あのミズノのシューズのラインです。シューズに配置してみると、鳥が疾走しているようにも見えました。そこで「ランバード」という愛称も生まれました。

でも、それはあくまでも後からつけた名前であって、もともとは健次郎さんが言った「惑星の軌道」という言葉から誕生したデザインだったのです。

そして、これを読んで「あれ? でも〈ランバード〉って文字としてのロゴも実際あったし、あれも1ブランドとして存在していなかったっけ?」と思われる方もいらっしゃるでしょう。あなたは相当なミズノウォッチャーです! 

そう、その後〈ランバード〉はミズノのシューズを軸に、ウェア類も展開するブランド名となり、たしかにそのロゴも存在していました。現在そのブランドはありませんが、ミズノのシューズをつくる専門の工場は、今も〈山崎ランバード工場〉と名前がついています。

ちなみに、あのランバードのラインも時代と共に微妙に変化しています。よりシャープに進化しているのですが、これが見分けられたら、もはやミズノマニアです。

▲ランバード比較 出典:『ミズノ本』(小社刊)