無理にテンションを上げない

昔から本が好きでした。なかでも記憶に残っているのは『よあけ』という絵本です。

ある湖が夜明けを迎えるまでの様子を描いた絵本で、とてもシンプルなストーリーなんですが、文章がとにかく美しくて。読んでいると、その場にいるような気がするくらい、美しい景色がありありと目に浮かぶんです。

私たちの仕事は天気を伝えること。一言でそう言ってしまえば簡単ですが、例えば明日の天気は、ある人にとってはなんともないことかもしれませんし、ある人にとっては特別な意味を持つかもしれません。

ラジオのように音だけで聞く人もいます。だから、私はいつも聞いている人の頭の中に、絵が浮かぶように話すことを心がけています。抑揚をつけたり、言葉の選びかたを変えるだけで、ずいぶん印象が変わることもキャスターを続けるなかで気づいたことです。

例えば、今日の天気は薄曇りですっきりしない空ですけど、その先、例えば明日は晴れるのかなと、そこまで想像を膨らませていただけたらうれしいです。

▲とにかく撮られ慣れている印象

私たちはカメラに向かって少し先の未来のことを話しています。いわばこちらから皆さんに「投げて」いる状態。私からのメッセージなんです。

だからこそ、しっかり伝わっただろうか、と心配になることがあります。私の言葉は宙に浮いてしまっていないだろうか、と。

そんなときに「ありがとう」という言葉であったり、現地の皆さんからのお天気のご報告という形で、何かが「返って」きたときに自分の仕事の意味や、やりがいを感じます。

温暖化が進み「気象災害」は多くの人の関心ごとになりました。決してひとつの言葉で語れない、その日の空模様を時には楽しく、時には真剣に、そしていつでも正しい情報を必要としている方に、しっかりと届けるのが私たちの仕事だと思っています。

▲ピースサインもチャーミング

自分のスタイルは、無理にテンションを上げないこと。得意でないことをしても仕方ありませんから。あとは、聞き馴染みがいい言葉を使うこと。

「あなたが伝えてくれたからしっかり受け止めたよ」と、確かに誰かに「伝わっている」ことが感じられた瞬間は本当にうれしくなります。

本番は小さなハプニングの連続です。でも、どんなことが起きても冷静に対処しないといけません。そのために綿密な事前準備は大事です。

例えば、読む予定の原稿がすぐに見つからないときなんかは、とても焦ります。マイクにガサガサという紙の音が入らないよう、細心の注意を払って探し続けて、結局見つからず、そのまま話し終えてしまったこともありましたが、原稿を事前に頭に入れていれば問題はありません。

顔に出さない、小さいことで動揺しない。それはキャスターにとって大事な素養だと思うんですね。悲しいことがあっても、仕事に持ち込まない。それがプロだと思うからです。