世界のEVバッテリーの多くがメイドイン中国&韓国

岡崎 テスラは最初、パナソニックのバッテリーを使っていたのですが、中国製に一部を切り替えたりしてね。

池田 そうですね。結局、台数を多く作りたくなった結果、今では中国からもバッテリーを買うことになっています。

テスラは10年後でも90%保証するだとか、バッテリーの劣化に対して自信を持っていることをアピールしていましたが、中国製を搭載したとたん、買ったばかりの新車の航続距離が20%もダウンしちゃったりね。

岡崎 中国製のバッテリーを積んだら問題が起きましたね。

で、テスラはお得意の「オンラインアップデートで改良する」とか言って、ユーザーもそれを期待していたわけですが、蓋を開けてみたら航続距離をカタログ値より大幅に減らすという詐欺まがいのアップデートだったわけです。

やっぱり、さっき池田さんが言っていたように「ものづくりの哲学」というものが、命に関わる商品である自動車には特に大事なんです。

日本のものづくりって「壊れちゃいけない」「お客さんに迷惑かけちゃいけない」っていう考えが第一にあるんですよね。

池田 「クルマが燃えるなんてとんでもない!」って、日本のメーカーは普通に思っているわけですよね。日本のお客さんも「そんなの当たり前じゃん」って思ってるわけですけど、世界のメーカーは必ずしもそうは思っていません。

岡崎 だから、日本のバッテリーメーカーは、無茶苦茶厳しい試験をしていたりします。バッテリーの内部って、電極がミルフィーユみたいに幾重にも重なっているものなんですが、これがショートをすると燃える仕組みになっているんですよね。

で、そこに釘を刺すなんていう、とんでもない試験を日本はちゃんとやっているわけです。

そんなことしたら全部導通しちゃうので「そりゃ燃えるだろう」っていうくらいのことなんですけど、それでも燃やさない技術を日本のメーカーは持っています。だから価格も高くなるわけです。

加藤 中国湖南省にある、テスラのバッテリーを供給する工場も爆発していましたよね。

岡崎 日本でもソニーのバッテリー工場が爆発したことがありました。リチウムイオンバッテリーはたしかに革命的なバッテリーですが、その分リスクも高いんです。

加藤 バッテリーは難しい。しかも危険が伴う。EVってバッテリーの上に乗っているようなものでしょう?

岡崎 シートの下にバッテリーが敷き詰められていますからね。

加藤 まさに危険と背中合わせですね。

岡崎 本当にそういうことなんですよ。普通はガソリンエンジンの方が、ガソリンを積んでいるから燃えそうで危ないと思うじゃないですか。でも、危険なのはEVも同じで、むしろEVの燃えかたが激しい。

池田 ガソリンは長い時間をかけて、安全に使う技術が完成されていきました。本当はEVもそうなれるはずなんですが、今、マーケットが興味を持っているのは価格と航続距離。

だから、安く大容量に作るところにどうしても開発が向かってしまう。そういうなかでも、安全性に妥協しない哲学があるかどうかが問われているのです。

それとあまり知られていませんが、リチウムイオン電池って、燃えると消せないんですよ。消火の方法がないんです。

 ▲交通事故で火災になると大変なことに… イメージ:©Aちゃん / PIXTA

加藤 じゃあ、事故ったら大変じゃないですか。消防車は役に立たないの?

池田 実はそうなんです。燃えているのがEVだとわかったら水を掛けられない。

新たなショートが発生して、状況がさらに悪化したり、感電したりするリスクがあるからです。

火災のごく初期なら粉末系消火器が使えますが、EVが燃えている動画を見たことがある人ならご存知の通り、バッテリーの火災は火の回りが速く、よっぽど早期でないと間に合わない。

しかも昨今、バッテリーは床下にあるので、消そうにも消火剤が入らないんですよ。煤にも酸化コバルトや酸化ニッケルといった有毒物質が含まれています。

EVが燃えたら、消え終わるまで待つしかないのです。だから極力燃えないように注意深く作るというのが、日本メーカーの考え方です。

多少値段は高くなろうと、僕はその考え方がとても日本らしいし、それは世界に誇るべきものだと思いますね。


※『EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』は、インターネット番組『EV推進の噓』(未来ネット)を元に、再編集を行ったものです(2021年1月〜6月配信。以降YouTubeで無料配信中)。