EV(電気自動車)は“未来のクルマ”だと思っている人も、きっと多いのではないでしょうか。実際、新聞やテレビのニュースではそのように伝えられていますが、実はまだまだ問題もあるのが実情です。そのなかでも、特にEVの心臓部である「リチウムイオンバッテリー」については、その特徴や危険性についてまったく知られていません。
加藤康子氏(元閣官房参与)、池田直渡氏(自動車経済評論家)、岡崎五朗氏(モータージャーナリスト)の3名が、EVの性能や機能性について語り合います。
※本記事は、加藤康子×池田直渡×岡崎五朗:著『EV推進の罠 「脱炭素」政策の嘘』(ワニブックス:刊)より一部を抜粋編集したものです。
冬場のEVがヤバい!
加藤 2021年の1月、北陸の日本海側は大変な大雪で、1500台の自動車が道路で立ち往生しているというニュースが飛びこんできましたけれども、EVが雪道で“電欠”になると、どうなるのでしょうか?
岡崎 EVにとって冬はきつい時期なんですよね。たっぷりとバッテリーが残っている状態でも、暖房をつけていると結構すぐになくなります。そこがまずガソリン車との大きな違いです。
こういう話をすると、EV推しの人たちは「いや、ノルウェーなんかではEVがガンガン走ってる」って言うんですけど。ノルウェーは、日本のようなドカ雪が降らないんです。寒いところですが、豪雪地帯ではないんですね。
日本は世界でも豊かな自然環境ですが、大雪や水害など自然災害も多い国です。そういう国で、すべてのクルマがEVになって、ちゃんとうまく回っていくのか? 答えはNOだと思います。
加藤 あのときは自衛隊が出動して、ガソリンを配っていましたね。
岡崎 そうです。ガソリンなら配れますけど電気は配れません。
池田 軍隊は当然インフラがないところでも戦争しなきゃいけない。だから、そういう場所に燃料を運んで、配って回れるような技術と設備はだいたい持っているわけです。だけど電気については、そんなものはないですよね。
加藤 電欠になったら何日間もずっと身動きがとれない……。
池田 電気が切れたクルマが100台あれば、レッカー車100台分が必要なのが現状です。
「EVは環境に優しい」の嘘
岡崎 そもそも「なぜEVなのか?」というと、「地球のため」「脱炭素のため」って言うわけじゃないですか。
加藤 ほぼそれです。
岡崎 あれ嘘です。確かにエンジン車(ガソリン車、ディーゼル車)の排気管からはCO2が出るけれど、EVにはそもそも排気管がない。
でも「充電する電気はどこで作られていますか?」「発電所の煙突からシューっと出ているのはなんですか?」ということです。
電気を作るときにCO2が大量に出ていますから、出ている場所が違うだけなんですよね。
EVになったらゼロ・エミッション(CO2排出ゼロ)って言われますけど、この理屈を考えた人はちょっと天才だっていうくらい、“わかりやすい大嘘”です。
池田 まぁ、最初は手心を加えられていたわけですよ。「環境に対して良い技術だから、多少の誇張は許しましょう」ということだったんですけど、現実にはバッテリーを作る段階でもCO2はいっぱい出ます。
それから、クルマが走っているあいだには、これは発電の際の化石燃料の構成比によるんですけれども、日本の場合には70%以上が化石燃料で、ものすごい勢いでCO2が出てしまう。それからバッテリーを廃棄するときなども、とてもCO2負荷が高い。
岡崎 そこに関しては、さまざまな試算があるんですけど。じゃあ「EVと普通のガソリン車とでは、どっちがいっぱいCO2を出すのか?」と言うと、EVはバッテリーを生産する段階で多くのCO2を出すので、だいたい10万km走ってトントンになるくらいなんですね。
それ以上走ると、EVの方がちょっとずつ良くなっていきます。
でも、日本のクルマってだいたい13万km平均で廃車になるんです。だから、トータルで考えるとあまり変わらないということにもなりますね。