星の名前にアラビア語起源が多い理由
中東イスラム世界の占星術は、古代インドと古代ギリシア両方の影響を受けていますが、どちらかといえば、古代バビロニアの占星術を継承する古代ギリシアの影響のほうが大でした。
11世紀頃までは、現在のイラクを中心にサービア教徒という星辰崇拝者も多くいたようで、それらの影響もあってか、9世紀にはアブー・マアシャル(ラテン名アブルマサル)という中世最大の天文学者が現れます。
彼は『大序説』や『小序説』といった占星術の入門書、アッバース朝の正統性を論じた『宗教と王朝の書』、個人を占うための『誕生年回帰の書』など多くの著作を残し、そのすべてがラテン語に訳され、西欧に伝えられたため、彼の考案した占星術は、中世カトリック世界にも大きな影響を与えることになりました。
アルカリやアルコールなど、アラビア語起源の化学用語が多いことからも明らかなように、11~13世紀のカトリック世界はイスラム世界の学術に敬意を払い、翻訳活動を通じた摂取に貪欲なまでに励みました。
アルコル(死兆星)やヴェガ、アルタイルなど、星の名にアラビア語起源が多いのもそのためです。