海外で賞を獲得した主演作への想い
2020年には、神威杏次監督による映画『スモーキー・アンド・ビター』に主演。
「この作品では、スペインのマドリード国際映画祭外国語部門最優秀主演男優賞をいただきました。もともとクラウドファンディングで出資者を募って、180万円で制作した無国籍風アクション映画です。自分の役は、スラップスティックな要素がある役で、コメディーでありながら記憶を取り戻そうとするシリアスな役柄です。映画は二部構成になっていて、2つのエピソードが最後につながるという構成です」
この映画には熱い想いがある。
「監督の神威杏次とは前からの付き合いで、彼がワンシチュエーションで撮った作品がすごく面白くて、“次やるなら出してよ”と言ってたのが実現しました。海外で評価される日本映画って、日本っぽい映画が好まれるイメージがあるんですが、この映画はさっきお伝えしたように無国籍な雰囲気。それで評価されたのは、内容が面白いことの証明だと思います」
2021年には、神威監督による新作『ムーンライト・ダイナー』が公開される。
「今年、またクラウドファンディングで320万円を募り、すでに撮影は終わって、今は編集中です。2022年の初冬から『スモーキー・アンド・ビター』と同時上映を目指して動いてます」
菅原文太の背中から学んだこと
さまざまな土壇場を乗り越えてきた工藤。今の若者に土壇場を乗り越えるために伝えたいことを尋ねると
「よく若い人から相談されることもあるんですけど、やっぱり覚悟があるかないかだと思います。自分自身、覚悟を持ってこの世界に入ったわけではないけど、いろいろな人の背中を見て学んだことは覚悟の重要性です。それは特に菅原の親父さんから学んだと思います」
菅原文太は晩年、山梨で農業に従事していた。工藤も何度もそこに訪れ、話をし、農作業を手伝っていたという。そこで一番手伝っていたのは山梨出身の菅田俊。しかし、その菅田にも菅原は自分の病状を明かすことはなかったという。
「入院する直前に、沖縄へ翁長知事の応援演説に行ったんですけど、車椅子でげっそり痩せて、たぶん痛み止めを飲んでたと思うんです。それでも泣き言は一切言わなかったって。亡くなったことは次の日に電話で教えていただいたのかな、もう呆然としてしまいました。自分の人生の中でも、かなり濃密な時間を過ごさせていただいたので」
菅原との思い出を語るときの工藤は、寂しさと可笑しさが同居しているような表情をする。
「寝食を共にさせていただいたので、なんでもないことをふと思い出したりします。ご飯を一緒に食べて、親父さんは食べるのが早いから、それより先に食べ終わらないといけない。そして親父さんが残したものを“お前が食え”って。おかげで食う時間も早くなって、量も食べられるようになりました(笑)」
菅原からかけられた言葉で、忘れられない大切な言葉があるという。
「さっきお話した、中国映画『太行山上』に主演することが決まって、歓迎会を開いていただいたときに、どうしても菅原の親父さんに伝えたくて。親父さんは携帯を持ってなかったので、付き人に電話をかけて「主演が決まったことを親父さんに伝えてほしい」と言ったら、ちょうど横に親父さんがいたらしくて、“工藤か? 代われ”って。そこで“おい、謙虚にやれ、誠実にやれ、だが堂々とやれ。この言葉は相反することだが、お前わかってるな?”って。すごくジーンときました」
この言葉は、演じるうえで工藤の心の中にずっと残っている。
「海外でお芝居をするという自分に対して、謙虚に、でも堂々とやれ、と言えるのが親父さんの優しくてカッコいいところだなと思うんです。自分がやっている劇団の芝居を奥さんと見に来てくださったことがあって、劇団員も僕もすごく緊張して(笑)、お芝居をしたんですけど、終わったあとにみんなの前で感想を言ってくださって。“みんな良かった、工藤、お前だけ下手だな”って(笑)。すぐに奥さんが“そんなことないわよ”って否定してくださったんですけど、あれはかけがえのない思い出です」
出身地:広島県
血液型:B型
特技:殺陣(斬心塾)、中国語(北京語)、ギター、ベース
趣味:絵を描くこと・ギター・ベース
サイズ: 188cm/80kg/B102/W90/H100/S28
経歴
昭和57年~62年 菅原文太氏に師事
昭和63年~平成元年 唐十郎「唐組」に参加
2021年『スモーキー・アンド・ビター』主演
スペイン「マドリード国際映画祭外国語部門最優秀主演男優賞」受賞
〇【予告編】映画『スモーキー・アンド・ビター』sideA&sideB【神威組2020】