数々の逸話や伝説を持つスゴ腕OBの登場!

週1回の集会とは別で、OBも集まる月1回の集会があった。ここのトップは河本(かわもと)さん。初代リーダーの龍(りゅう)さんより、立場が上の人だ。つまり龍さんが社長なら、河本さんは会長のようなポジション。

この日は龍さんが集会に来ていなかった。先輩たちの慌ただしい様子を見る限り、何かあったのは明らかだ。話している内容に聞き耳を立てると、喧嘩に巻き込まれていることがわかった。そこに龍さんと一緒にいるはずの木村さんが現れた。

「あれ? 何してんだ? お前」

河本さんの質問に木村さんが答えた。2人で車で走っていたら、後ろから煽り運転をされて喧嘩が勃発。相手はラグビー部のようなガタイの6人で、木村さんは助けを呼ぶために逃げてきた。この話を聞いた河本さんの拳は、木村さんの顔を激しく殴打した。

「何してんの?」

「すいません」

殴る河本さん。謝る木村さん。尋ねる河本さん。謝る木村さん。殴る河本さん。決して他人事ではない。柔道部のようなガタイの男が出てきたときに、僕は何もできなかった。木村さんの気持ちは、痛いほどよくわかる。どう考えても勝ち目のない相手に立ち向かって、無駄な被害を受ける必要はないと思ってしまう。もしチームの中で同じことをしたら、辿るべき末路は目の前の男が体現している。何度も何度も繰り返される光景を、僕たちは黙って見ているしかなかった。

そこに頭から血を流した龍さんが到着。1人で全員を倒して舞い戻ったのだ。木村さんは居心地が悪そうにしている。そんな木村さんをよそに、河本さんがうれしそうに語り始めた。

「初めて龍を見たときはビックリしたよ。街中の悪そうな奴らが、揃いも揃って頭を下げてたからな」

ギャングイーグル創設時のこと。初期メンバーは3人。場所はマクドナルド。龍さんを含む3人は、町ゆく人たちを睨みつけて、喧嘩をふっかけてきた相手を倒すと決めて外に出た。大抵の相手は素通りをしたが、なかには立ち向かってくる猛者がいた。その相手を倒して言った一言が、伝説の幕開けになる。

「俺達がギャングイーグルだ! 覚えとけ」

ここから総勢100名になるまでは、そう時間がかからなかったと言う。今のリーダーはギャングイーグルの3代目。

2代目のリーダーは、初めて僕が集会に行ったときに皆を叱り飛ばしていた人だ。名前は伊口(いぐち)さん。本当は啓介くんが2代目のリーダーになる予定だったそうだが、面倒臭いから嫌だ、という理由で断ったとあとで聞いた。いかにも啓介くんらしい理由だ。この頃はまだ、遠くから啓介くんの存在を認識しているだけで、話しかけることができる距離感ではなかった。

他にも2代目には安田さんという男がいて、当時は少年院に入っていた。聞いた話では、1年前に伊口さんがミスタードーナッツで、敵対するチームの連中にビール瓶で頭を殴られた。隣にいた安田さんは、相手をガラスに投げ飛ばして破損。駆けつけた警察も投げ飛ばして逮捕。やっていることは無茶苦茶だが、仲間想いであることには変わりない。上の世代になればなるほど、数々の逸話を持った人たちが多勢いた。

いつか絶対に自分も先輩たちみたいな男になる。

そうして決意を新たに始めた真似事は、地元の先輩たち10人に呼び出されたことで後悔に変わる。

「45」は、次回12/3(金)に更新予定です。お楽しみに!!


プロフィール
 
福田 健悟(ふくだ けんご)/吉本興業所属
平穏な家庭に育つも、高校生になり不良の道へ。地元、岐阜県で最大の規模を持つ不良チームのリーダーとなる。18歳の頃、他チームとの抗争が原因で留置所に2週間、鑑別所に2週間の計4週間を更生施設で過ごす。週に1回の入浴、美味しくないご飯、笑うことが許されない環境で生活をして当たり前の日常の大切さに気づく。そもそも子どもの頃になりたかったのは、お笑い芸人だった。周りにナメられるのが嫌で言い出せなかった。不良を演じて虚勢を張っていた。出所後は本当の自分になることを決意し、お笑い芸人を目指して上京する。わずか10万円を握りしめての東京生活。コンビニでアルバイトをしながらも舞台と日常を分けずに常に芸人としての自分を貫く。すると近所で評判のコンビニ店員になる。「あのお兄さん大好き」「接客のプロ」とたくさんの称賛をいただきながら実感する。人は変われる——。世間から忌み嫌われていた不良が世間から愛される人間に更生した。人生における全ての「負」から立ち直った経験を生かして、他人のありとあらゆる「負」も更生する。つまらない時間を面白い時間に「更生」するため、お笑い芸人として活動中。Twitter→福田健悟@ganeesha_fukuda